「SIerはやめとけ」は本当?そういわれる理由を理解しよう

目次
システム開発や運用などの請け負いやサービスの提供を行うSIer。
SIerについてネット記事やSNSなどを調べていると「SIerはやめとけ」といった言葉を目にすることがあります。
あくまでもネット上の情報であるため、その真偽のほどは定かではありませんが、SIerで働くことに興味がある人にとっては非常に気になるポイントではないでしょうか。
そこで本記事では「SIerはやめとけ」といわれる理由や、SIerがおすすめできないエンジニアの特徴などを解説します。
エンジニアとして働きたいものの、どのような働き方をすべきか迷っている方はぜひ参考にしてみてください。
やめとけといわれる「SIer」とは?
Slerは「システムインテグレーター(System Integrator)」の略で、システムの企画から運用保守までを一貫して行う企業のことをいいます。
システムの導入から保守までを一貫して請け負っているため、その業務内容は多岐にわたり、働く側にも幅広いスキルや知識が求められます。
正直、SIerが未経験や経験の浅いエンジニアを採用することは稀です。
SIerを目指すのであれば新卒として挑戦するか、もしくはSESエンジニアとして実務経験を積んでからの転職をおすすめします。
SIerの特徴

SIerはクライアントの要望に応じて、企画・設計・開発・運用・保守までを請け負うため、対応できる業務内容は非常に幅広いといえます。
しかし、必ずしも全ての工程を1社のみで請け負うわけではなく、ほかの下請け企業と工程を分担して請け負うことも少なくありません。
一般的には大手Slerである元請け企業が要件定義や設計といった上流工程を担当します。
そして、中堅SIerや中小SIerなどの下請け企業がプログラミングとテストといった中流・下流工程を担当することが多いです。
なお、SIerでは成果物に対して報酬が支払われる仕組みです。
大手Slerであれば上流工程を担当できることが多いため、高収入を目指せます。
しかし、全てのSlerが上流工程を担当できるわけではないため、企業ごとの仕事内容を確認しましょう。
SIerの種類
SIerは次のように大きく5つの種類に分けることができます。
特徴 | 親会社 | 事業内容 | |
---|---|---|---|
メーカー系SIer | 大手コンピューターメーカーから独立 | 大手コンピューターメーカー | 親会社やグループ会社のハードウェアを使用したシステム開発を行う |
ユーザー系SIer | 大手一般企業の情報システム部門から独立 | 大手一般企業 | 親会社または外部企業のシステム開発が多い |
独立系SIer | システム開発を専門に行うことが多い | なし | 外部企業のシステム開発を行う 企業によって得意分野が異なる |
コンサル系SIer | 企画提案や要件定義を専門に行う | なし | 外部企業の経営課題に関するコンサルティング業務を行う |
外資系SIer | 海外企業の資本で設立されており、海外を中心に事業展開している | 外資系企業 | 海外企業のシステム開発 |
このようにSIerには種類があるものの、日本では多くの場合、独立系Slerを指します。
どのような業務に携わるかを知るためにも、SIerへの就職を希望している人は、自分の希望するSIerがどの種類であるかを把握しておくことが大切です。
独立系Slerの詳しい解説は、こちらの記事を参考にしてください。
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SIerはやめとけといわれる6つの理由
SIerは幅広い業務に携われることができ、収入もSESエンジニアと比較すると高いといわれています。
しかし、「SIerはやめとけ」といわれるのにはどのような理由があるのでしょうか。
「SIerはやめとけ」といった噂だけに惑わされず、そのメリット・デメリットを理解した上で判断することが大切です。
ここからは「SIerはやめとけ」といわれる代表的な6つの理由について解説します。
1.ハードスケジュールになりがち
SIerは納期までに成果物を納品する必要があり、納品できない限り報酬が支払われることがありません。
クライアントからの急な要望が入ったり、人手不足などの要因で作業が順調に進まないことも珍しくありません。
タイトな納期であっても、納期を厳守しなければ案件の受注自体がなくなってしまう可能性もあります。
そのため、納期に合わせて残業をしなければならないケースは多々あります。
2.ワークライフバランスがとりにくい
SIerの業務はクライアントの要望によって左右されやすく、突発的な仕事が発生するケースが多いです。
納期の前倒しや開発するシステムの大幅な仕様変更など、無理な要求を受けることもあります。
そのため、残業や休日出勤などが発生し、長時間労働が常態化しているケースも少なくありません。
「休みを満喫したい」「プライベートの時間を大切にしたい」という気持ちが強い人はストレスを感じやすい環境といえるでしょう。
3.離職率が他の働き方と比べて高い
SIerの中でも、特に独立系SIerでは、納期前の残業や休日出勤の多さから、離職率が高くなる傾向があります。
また、SIerでも開発やテストといった下流工程を担当することもあるため、「上流工程に携わりたい」という気持ちから不満を抱く人もいます。
特にPMのようなマネジメントスキルを身につけたい人にとってはやりがいを感じられず、辞めていくこともあるのです。
ただし、一口にSIerといっても、経営状態や労働環境はさまざまであり、離職率は企業によって大きく異なります。
自分に合う企業を見つけることができれば、短期離職に至ることはないでしょう。
4.企業によっては年収が低い
先程紹介した5種類のSIerのうち、特に親会社のない小規模な独立系SIerでは、年収が低くなる可能性があります。
なぜなら、独立系SIerは大きな資本を持つ親会社がなく、独立の資本で経営を行う必要があるためです。
さらに、親会社から安定して案件を得られるとも限らないため、業績が不安定になりやすく、中には「割に合わない」と感じてしまう人も一定数存在するのです。
求人情報・転職サイトdoda(デューダ)の調査によると、IT/通信業界全体の平均年収は460万円で、同調査の10業種の中では4位となります。
さらに「システムインテグレータ」でみると平均年収は475万円です。
もちろん全てのSIer企業に当てはまるわけではありませんが、事前にどの形態のSIerか確認しておくと安心です。
参考:求人情報・転職サイトdoda(デューダ)「平均年収ランキング(業種別の平均年収/生涯賃金)【最新版】」
5.高度なスキルを求められる
SIerはクライアントの要望に応じて、企画・設計・開発・運用・保守までを請け負うため、上流工程の業務に関わったり、マネジメントスキルが求められることもあります。
そのため、スキルや経験が少ない状態でSIerに入社できても、仕事が難しすぎると感じられる場面も多いでしょう。
やりがいが大きい一方、クライアントの要望に応じたサービスを提供するには、高いスキルを保ち続けることが必要です。
業務外の時間を使って新しい知識や技術を身につける努力が求められます。
6.キャリアパスが不透明になりやすい
現在のIT業界では、キャリアの選択肢が多様化しているものの、SIerは明確なキャリアパスが示されにくい職種です。
プロジェクトごとに異なる技術を駆使しながら働くため、自分のキャリアの方向性を定めにくくなることが理由として挙げられます。
また、親会社から出向してきた社員が管理職ポジションを独占するケースもあり、昇進のチャンスが限られているケースも少なくありません。
キャリアパスの不明瞭さは、働くモチベーションの低下を招き、結果として離職率の上昇にもつながります。
「こんなエンジニアは、SIerはやめとけ」4選
ここまでご紹介してきたとおり「SIerはやめとけ」とされる理由は確かにあります。
とはいえ、何事にもメリット・デメリットはあり、どの程度メリットを大きく感じられるかによって仕事との相性が決まるといっても過言ではありません。
SIerを目指すかどうか迷った時には、次のポイントを判断基準にしてみてください。
1.未経験・経験が少ないなら、SIerはやめとけ
SIerには下請け業務もありますが、上流工程の業務も多く扱っています。
そのため、エンジニアとしてのスキルや実績がないうちは案件に携わることは難しく、そもそも入社も難しいことが考えられます。
SESではエンジニア未経験者や経験の少ないエンジニアでも始めやすい下流工程の業務を扱っていることが多く、採用もされやすい傾向があります。
エンジニア未経験者や経験の少ないエンジニアは、いきなりSIerを目指すのではなく、まずはSESエンジニアとしてスキルや実績を積んでからの転職がおすすめです。
2.マネジメント系のスキルに興味がないなら、SIerはやめとけ
SIerは一般的にマネジメントや要件定義など、プロジェクト全体の管理や統括を行うことが多く、自ら手を動かす機会は少ない傾向があります。
そのため、プログラミングの作業だけに集中したい人の場合は、特に独立系のSIerには向いていないといえます。
特に大手のSIerほど、プログラミング業務は外注していることがほとんどです。
SIerで働きながらプログラミングの作業に集中したいという人は、SIerの中でもメーカー系のSIerが向いているでしょう。
3.専門性を極めたいなら、SIerはやめとけ
SIerでは、企画から運用保守まで幅広い業務を担当することが少なくありません。
そのため、例えば「要件定義を極めたい」「運用保守をメインに仕事をしたい」など、何か一つの分野の専門家を目指す人にはあまりおすすめできません。
専門性を極めるのであれば、SESエンジニアとして案件を選びながら特定の分野のスキルを磨いて実績を積み、働く方法もおすすめです。
また、その道の専門家として独立やフリーランスを目指すのも一つの手です。
4.新しいサービスの開発に関わりたいなら、SIerはやめとけ
Slerでは外部企業のシステム開発を請け負うため、クライアントの要望に沿った業務をすることになります。
そのため、特に独立系Slerでは、特定のメーカーに限定して業務にあたることは難しいでしょう。
特定のメーカーにこだわりたい人、新しいサービスに関わりたいと考える人は、独立系Slerではなく、メーカーSlerや外資系Slerの方が向いているといえます。
監修者コメント

白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
自分のスキルや実績を整理しよう
SESエンジニアとして働きたいと考えている人の中には「SES」「Sler」「自社」のいずれかの選択肢で迷っている人が多いのではないでしょうか。
また、スキルや実績がある人であれば、フリーランスや独立を考えている人もいるでしょう。
しかし、そもそもSlerは幅広い案件を扱い、上流工程に携わることも多いです。
そのため、スキルや知識に加え、コミュニケーション能力などの総合力がなければ就職は容易ではありません。
選択肢の一つとしてSlerを考える前に、まずは自分にSlerで働けるだけのスキルや実績があるかを振り返ってみましょう。
これらを確認しないまま就職活動をしてしまうと、結果的に就職先が決まらず多大な時間と労力を無駄にしてしまう可能性があります。
SIerで働くか迷うなら、「SES」という選択肢もあり

Slerでは、幅広い仕事内容を経験できたり、上流工程の業務にも多く携われるというメリットがあります。
一方で「Slerはやめとけ」といわれるようなデメリットもあり、Slerという働き方が合わない人も一定数います。
そもそも、未経験や経験の少ないエンジニアにとっては、Slerに就職することも容易ではありません。
そこで、Slerで働こうか迷っている人は、まずはSESで働いてみるという選択肢もあります。
SESであれば未経験やエンジニア経験の少ない人でも就職がしやすく、さらに様々な分野に関わりながらスキルアップも可能です。
SESエンジニアとしてスキルや実績を身につければ、Slerへの転職もしやすくなります。
SESエンジニアの場合は、常駐先で実力を認められ、大企業にヘッドハンティングをされ転職できるケースも珍しくありません。
「SIerはやめとけ」についてよくある質問
「SIerはやめとけ」といわれる理由を解説してきましたが、実際にSIerへの就職や転職を考えている人にとっては、まだ多くの疑問が残るかもしれません。
「本当にSIerは避けるべきなのか?」「どんな人なら向いているのか?」といった不安を解消するために、SIerに関するよくある質問をまとめました。
SIerという働き方が自分に合っているのか、SESや自社開発と比較してどちらが向いているのかを判断する際の参考にしてください。
Q1.「SIerはつまらない」って本当?
SIerがつまらないと思われてしまう主な理由は、以下の5つです。
- 開発・プログラミングの機会が少ない
- 資料作成の業務が多い
- チャレンジが難しい
- 顧客に振り回されがち
- 技術面よりマネジメントスキルを重視される
人によって仕事のどこにやりがいを感じるかは異なるため、これらを考慮しても目指したいと感じる人は、SIerをおすすめできます。
ただ「SIerはつまらない」と感じたまま仕事を続けると、モチベーションの低下につながることもあります。
自分で改善できる部分もありますが、どうしても合わないと感じるなら、転職を検討するのも一つの選択肢です。
SIerがつまらないと感じる理由をもっと深く知りたい人は、こちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
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Q2.SIerとSESの違いは?
SIerとSESの違いは「契約形態」「勤務場所」「報酬の対象」です。
これらの違いを、以下の表に整理しました。
SES | SIer | |
---|---|---|
契約形態 | 準委任契約 | 請負契約 |
勤務場所 | 客先 | 自社 |
報酬の対象 | エンジニアの業務時間 | 成果物 |
SESはクライアント先で勤務し、その業務時間に応じた報酬が支払われる仕組みです。
一方、SIerは基本的に自社での勤務となり、成果物に対して報酬が支払われます。
SESとSIerの違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ぜひ合わせてご覧ください。
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まとめ
今回ご紹介したとおり、一口にSIerといっても様々な種類があり、同じSIerであっても企業によって特徴は異なります。
「やめとけ」といわれる理由がSIer全てに当てはまるわけではありません。
大切なのは、まずは自分のやりたいことやキャリアプランを明確にした上で企業選びをすることです。
また、エンジニア経験が少ない人や、未経験者の場合は、SIerに就職すること自体難しい可能性があります。
その場合は、まずSESエンジニアとして経験を積むことも検討してみましょう。
弊社ESESは「新SES」と呼ばれる、エンジニアの労働環境改善を積極的に行っているSES企業です。
「案件選択制度」や「単価評価制度」「高還元率(77%)」といった特徴を持ち、エンジニアが働きやすい環境づくりに努めています。
「SESにも興味があるものの、搾取されるような働き方はしたくない……」そんな想いがある方は、ぜひESESの応募詳細をご確認ください。
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監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
プロフィールを見る
同じ「SIer」でも企業によって働き方が異なる
Slerというと自社で勤務するイメージを持っている人も多いかもしれませんが、独立系Slerの場合は、客先常駐があることも珍しくはありません。
そのため「SESで客先常駐になるのが嫌だからSlerで働きたい」と考えている人は注意が必要です。
また、上記のように一口にSlerといってもどのタイプのSlerを選ぶかによって仕事内容や働き方は大きく異なります。
働き方によってはSESの方が向いているという場合もあるため、まずはそれぞれの違いをきちんと理解しましょう。