「独立系SIer」とは?特徴を知って自分に合う働き方を選ぼう
目次
独立系SIerは、特定の親会社やグループ会社のないSIerで、外部企業のシステム開発をメインに請け負っています。
企業によって特徴が異なり、メリットもあればデメリットもあるため、自分自身がどのような働き方を望んでいるかをよく考えることが大切です。
本記事では、独立系SIerの特徴や他のSIerとの違い、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。
加えて、働きやすい独立系SIerを見極めるためのポイントも紹介しますので、あなたのキャリアプランを考えつつ、自分に合った企業選びの参考にしてください。
この記事の監修者
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
株式会社ESES 代表取締役社長
1990年生まれ。埼玉県出身。SES業界を「“良い”SES」にするために業界No.1の立ち位置を目指す、株式会社ESESの代表取締役。人材サービス事業を行うUZUZ(ESESのグループ会社)において、営業部長や支店立ち上げを経て、最年少で執行役員に就任した経歴の持ち主。現在は、経営業務だけでなく、営業や採用にも幅広く従事し、SES業界に革新を起こすために日々奮闘中。
独立系SIerとは?
SIerとは「システムインテグレーター(System Integrator)」の略で、システムの企画や構築、運用保守などを手掛ける企業を指します。
中でも「独立系SIer」は、システム開発を専門に行う機会が多い企業です。
そのため、エンジニアは多様なシステム開発プロジェクトに携わる機会が多く、柔軟な対応力が求められます。
ここからは、独立系SIerの「特徴」や「他のSIerとの違い」について、掘り下げて解説します。
特徴
独立系SIerは、特定の親会社やグループ企業に属さず、独立して業務を行うという特徴があります。
このため、親会社の影響を受けることなく、自由度の高いビジネス展開が可能です。
主に外部企業のシステム開発をメインに行っており、業界を問わず様々なクライアントに向けて最適なソリューションを提供しています。
クライアントのニーズに合わせ、柔軟かつ高度なシステム開発に携われるため、幅広い分野での経験を積むことができます。
他のSIerとの違い
SIerには、大きく分けて5種類あります。
それぞれの特徴や事業内容、企業例については、以下の表にまとめましたのでご覧ください。
特徴 | 親会社 | 事業内容 | 企業の例 | |
メーカー系 | 大手コンピューターメーカーから独立 | 大手コンピューターメーカー | 親会社やグループ会社のシステム開発 | 富士通 日立製作所 日本電気 |
ユーザー系 | 大手一般企業から独立 | 大手一般企業 | 親会社または外部企業のシステム開発 | 伊藤忠テクノソリューションズ NTTデータ SCSK |
独立系 | システム開発を専門に行う | なし | 外部企業のシステム開発 | 大塚商会 オービック 富士ソフト |
コンサル系 | 企画提案や要件定義を専門に行う | なし | 外部企業のコンサルティング業務 | 野村総合研究所 ベイカレント・コンサルティング シグマクシス |
外資系 | 海外を中心に事業展開している | 外資系企業 | 海外企業のシステム開発 | 日本オラクル アクセンチュア SAP |
単に「SIer」という場合、多くは独立系SIerを指しています。
メーカー系やユーザー系のSIerは、特定の親会社やグループ企業に依存したビジネス展開を行うのが特徴です。
コンサル系SIerは、業務改善や戦略立案といったコンサルティングを主軸に置き、システム導入を支援します。
外資系SIerは、外資系企業や海外市場に特化したサービスを提供する点で、独立系SIerとは異なるといえます。
独立系SIerの3大メリット
独立系SIerには、大きく以下3つのメリットがあります。
- 柔軟な働き方ができる
- 幅広い経験ができる
- 正当な評価を受けやすい
ただし、メリットと感じるかどうかは人それぞれであり「自分にとって魅力的か」「今後のキャリアにプラスになるか」など、しっかりと考えることが重要です。
この点に注意して、独立系SIerのメリットを詳しく見ていきましょう。
1.柔軟な働き方ができる
独立系SIerは、特定の親会社やグループ企業に縛られないため、業務内容やスケジュールにおいて柔軟性が高いという利点があります。
自社で業務をコントロールできるため、プロジェクトごとに働き方を調整しやすいのです。
また、リモートワークやフレックス制度を導入している企業も多く、自分のライフスタイルやワークライフバランスに合わせた働き方が可能です。
これにより、プライベートと仕事を両立させながら、効率的にキャリアを築くことができます。
2.幅広い経験ができる
独立系SIerは、業界問わず業務を請け負うため、様々な業種や企業のプロジェクトに携われます。
システム開発がメインの業務ではあるものの、ITインフラの構築や運用保守などを行う機会も多く、幅広いスキルを身に付けられます。
多様な分野・技術に触れることでスキルの幅が広がると、将来的なキャリアの選択肢も増えるでしょう。
このように、技術力と経験値をバランス良く高められる点は、独立系SIerで働く上での魅力といえます。
3.正当な評価を受けやすい
独立系SIerでは、年功序列よりも実力主義の風潮が強い傾向にあります。
そのため「経験年数が長いから重要なプロジェクトを担当できる」「経験年数が短いから年収が低い」といった、年功序列に基づく評価がされにくいです。
実力や成果を基準に判断されるため、報酬やキャリアに反映されやすく、納得のいく評価を得られるでしょう。
自分のスキルや貢献度が正当に評価される環境で働きたいエンジニアにとって、独立系SIerで働くメリットは大きいといえます。
独立系SIerの3大デメリット
独立系SIerには多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。
主なデメリットは、次の3つです。
- 長時間労働になりがち
- 客先常駐が多い
- 離職率が高い
これらのデメリットを理解し、自分が納得して働けるかどうかをよく考えることが大切です。
1.長時間労働になりがち
外部から業務を請け負う以上、独立系SIerには納期の厳守が求められます。
しかし、もともとの納期が短めだったり、急な要望による仕様変更に対応する必要があるため、タイトスケジュールになることも珍しくありません。
プロジェクトが佳境に入ると、特にその傾向は強くなり、場合によっては休日や深夜にまで作業が及ぶこともあるでしょう。
この結果、長時間労働になってしまう点が、独立系SIerで働くデメリットの一つといえます。
2.客先常駐が多い
独立系SIerは、下請けやパートナー企業として競合のプロジェクトに携わることが多く、クライアント先に常駐して働くことも少なくありません。
このような業務の特性上、プロジェクトごとに異なる場所へ常駐することになるため、職場環境が頻繁に変わります。
そのため、変化に対応することが難しく、ストレスを感じる人にとって、独立系SIerはデメリットが大きいといえるでしょう。
また、プロジェクトの期間中はクライアントのオフィスでチームメンバーとして作業を行うため、自社内で働く機会が少なく、帰属意識が低くなりがちです。
3.離職率が高い
独立系SIerの中には、納期に追われて長時間労働が常態化する企業もあり、エンジニアにとって大きな負担となります。
このような厳しい労働条件が原因で、身体的・精神的に疲弊し、離職に繋がるケースも多いです。
また、幅広い案件に携われる魅力がある一方で、必ずしも自分が希望する分野やスキルの経験を積めるとは限りません。
そのため、期待とのギャップや不満が蓄積され、最終的には離職率が高くなる原因にもなっています。
働きやすい独立系SIerを見極めるポイント
働きやすい独立系SIerを見極めるためには、企業の特徴や実績をしっかりと確認する必要があります。
特に、以下のポイントに着目してみましょう。
- 多様な業界・企業とつながっている
- 豊富な実績がある
- 元請けに近い案件もある
- 離職率が低い
- 労働条件に納得できる
企業によって特徴が異なるため、自分の働き方やキャリアプランに合った会社を探すことが大切です。
多様な業界・企業とつながっている
独立系SIerは、親会社や特定の業界に限定されず、様々な企業と繋がりを持てる点が特徴です。
特に、多様な業界のプロジェクトに携わることのできる企業は、エンジニアにとって幅広い経験を積む絶好の機会を提供します。
IT業界は技術の進歩が早いため、異なる分野の知識を身に付けることが、エンジニア自身のスキルアップやキャリアアップに大いに役立ちます。
「エンジニアとして活躍し続けたい!」と考えている人は、多様な業界・企業と繋がっている独立系SIerを選びましょう。
豊富な実績がある
豊富な実績を持つ企業は、様々なプロジェクトを成功させてきた経験から、クライアントからの信頼性や評価が高いです。
このような企業は、多様な案件やスキルレベルの高い依頼が集まりやすく、エンジニアも高度な技術を磨くことができます。
また、実績は企業自体の成長や経営の安定性にも関わるため、企業選びの重要な判断材料ともなります。
安心して長期的に働きながらも、スキルアップを目指したい人は、豊富な実績を持つ独立系SIer企業を選びましょう。
元請けに近い案件もある
元請けから離れている案件は、どうしても報酬が低くなったり、求められるスキルレベルも低いことが多いです。
反対に、元請けに近い案件では報酬が高く、専門性の高いスキルを使用できるため、エンジニアとしてのスキルアップに直結します。
全ての案件が元請けに近い必要はありませんが、扱っている案件のほとんどが元請けから離れている場合は、成長の機会が限られる可能性があるため注意が必要です。
このように、元請けに近い案件があるかどうかを確認することは、エンジニアが自身のスキルを高め、キャリアを充実させるために重要なポイントといえます。
監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
スキルアップに繋がる案件の選び方
先ほども少し触れましたが、元請けに近い案件に携わることは、エンジニアとしてのスキルアップに繋がります。
具体的には、次のようなプロジェクトを選択することで、より一層の成長が期待できます。
・大手企業のITインフラを構築するプロジェクト
・最新技術を活用するプロジェクト
・セキュリティに重点を置いたプロジェクト
大手企業や自治体のITインフラを構築する場合、プロジェクト全体の設計から運用に至るまで幅広い業務を経験できるため、システム全体の知識を深めることが可能です。
また、最新のクラウド技術やセキュリティ特化の案件など、専門性の高い分野に携わることができれば、より需要の高いエンジニアとして成長できるでしょう。
こうした案件で経験を積むことで、次のキャリアステップへの道が広がりやすくなるため、積極的に取り組む価値があるといえます。
離職率が低い
独立系SIerは厳しい労働条件になりがちのため、離職率が高くなりやすいことは否定できません。
しかし、その中でも離職率が比較的低めの企業であれば、労働条件が整っていたり、エンジニアが満足して働ける環境が整備されている可能性が高いです。
労働時間や働き方の柔軟性、適切な評価制度などが整っていることで、離職率は低くなります。
離職率が低い企業を選ぶことは、長期的に安心して働ける職場環境を見つけるための重要ポイントといえます。
労働条件に納得できる
労働条件に納得して働ける企業であれば、長期的に安心して働くことができます。
特に給与や賞与・労働時間・福利厚生などは、日々の業務のモチベーションに直結する重要な要素です。
そのため、自分が譲れない条件を明確にして、それらをクリアしている企業かを確かめましょう。
全ての希望を満たしていなくても、自分が納得できる条件で働ける企業を見つけることが、キャリアの安定や充実感に繋がります。
独立系SIerが不安ならSES企業も選択肢の1つ
独立系SIerには多くのメリットがありますが、エンジニアの中には働くことに不安を感じている人も少なくありません。
そのような人には、SES企業で働くことをおすすめします。
主な理由は、以下の2点です。
- 経験が少ないエンジニアでも担当できる案件があるため、無理なくスキルアップを目指せる
- 独立系SIer同様、客先常駐が基本だが、企業によっては自分で案件を選べる仕組みが整っているため納得感を持って働ける
SES企業で幅広い経験を積むことで、将来的に独立系SIerに転職しようと考えた時、その一歩を踏み出しやすくなるでしょう。
このような理由から、SES企業は、エンジニアとしての土台を築くのに適した環境といえるのです。
まとめ
独立系SIerは、特定の親会社やグループ企業に属さず、独立してシステム開発を請け負う企業です。
メリットの多い一方でデメリットもあるため、全ての人に適しているわけではありません。
そのため、企業選びは「自分がどのような働き方をしたいか」をしっかりと考えた上で慎重に行う必要があります。
また、エンジニアとして働く中で「スキルが足りているか心配…」「経験が少ないけど大丈夫かな?」と不安を感じている方は、SES企業で経験を積むことも一つの選択肢です。
SESなら、経験が少なくても、自分のスキルに合わせて無理なくスキルアップを目指せます。
スキルを身に付けた後には、独立系SIerへの転職も目指しやすいでしょう。
弊社ESES(イーエス)もSES企業として、エンジニアの働きやすさを重視した以下の制度を導入しています。
- 案件選択制度…エンジニア自身が希望に合った案件を自由に選択可能
- 単価評価制度…透明性の高い評価により納得できる報酬を得られる仕組み
- 高還元率(現在77%)…エンジニアの報酬額を決めるための指標
弊社も就職先の候補に入れつつ、あなたが納得できるキャリアプランを練っていただければ幸いです。
監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
プロフィールを見る
独立系SIerのキャリアパス
独立系SIerでは、様々な経験を積むことができるため、自らの努力次第で幅広いキャリアを築けます。
例えば、次のようなキャリアパスが考えられます。
・プロジェクトリーダー:チームをまとめ、プロジェクトの進行管理やクライアントとの調整を担当する
・マネージャー:複数のプロジェクトを監督し、組織全体の運営や戦略に関与する
・CTO(最高技術責任者):会社全体の技術戦略を立案し、技術的リーダーシップを発揮する
・スペシャリスト:特定の技術や分野に特化し、専門性を高めてリーダーシップを発揮する
このように、キャリアの選択肢が広いことは、独立系SIerの魅力の一つです。
「どのキャリアパスにしようか悩む…」という方は、自分の適性や目指す方向性を明確にすることで、より充実したキャリアを実現しやすくなるでしょう。