運用保守エンジニアがキャリアアップするには?3つの選択肢と必要な知識・技術を解説
目次
システムの安定稼働を支える運用保守の仕事は、企業にとって欠かせない存在です。
日々の業務は一見地味に見えるかもしれませんが、トラブルに対処し、安定したIT環境を維持するという重要な役割を担っています。
しかし、運用保守の現場で働く中で「キャリアアップできるのだろうか」「もっと成長するにはどうすればいいのか」と不安や迷いを感じるエンジニアも少なくありません。
運用保守という目立ちにくいポジションだからこそ、自分の強みや可能性をどう活かしていくかが見えづらくなることもあります。
本記事では、運用保守のキャリアアップの選択肢や必要なスキルなどを具体的に解説します。
今後のキャリアを前向きに考えるきっかけとして、ぜひ参考にしてください。
運用保守エンジニアがキャリアアップを考える理由
運用保守エンジニアがキャリアアップを考える背景には、様々な理由があります。
- 収入アップを目指している
- 新たな経験を積みたい
- 将来性に不安がある
人によって理由は異なりますが、多くのエンジニアが何らかのキャリアに対する不安や課題を抱えているのが現状です。
収入アップを目指している
運用保守は、システムの安定運用を支える重要なポジションです。
その一方で、業務がルーティン化しやすく、スキルアップの機会が限られてしまう傾向もあります。
結果として、給与レンジが他の職種に比べて伸びづらいケースも少なくありません。
こうした背景から「もっと収入を上げたい」「将来的に年収を伸ばしていきたい」と考えるエンジニアはキャリアアップを意識するようになります。
特に、スキルを磨いて上流工程にステップアップできれば、業務の幅が広がるだけでなく、報酬面でも大きな変化が期待できるでしょう。
収入アップは単なる金銭的な目的にとどまらず、自分の成長や価値を実感するための指標にもなります。
より高い報酬を目指すことは、技術者としての専門性や責任を広げていくことにもつながります。
新たな経験を積みたい
運用保守の業務を通じて、システム全体の理解やトラブル対応力は着実に磨かれていきます。
その反面、開発や設計といった「何かを作り出す業務」に携わる機会は限られているのが実情です。
定型業務を繰り返す日々の中で「もっと創造的な仕事がしたい」「新しい技術に挑戦してみたい」と感じる人も少なくありません。
その中で「根本的な改善ができないか」と考えたり、監視ツールを使いこなす中で「自分でも開発してみたい」という思いが芽生えたりするでしょう。
このように新しい知識や技術を吸収したいという意欲こそが、キャリアアップへの第一歩です。
現場での経験を土台に、新たなキャリアへと踏み出すエンジニアは少なくありません。
将来性に不安がある
運用保守の現場にも、自動化やクラウド化の波が押し寄せています。
従来の運用業務の一部が不要になったり、より戦略的な判断や高度なスキルが求められたりする可能性があるでしょう。
現段階ではこのようなシステム導入が進んでいない現場もありますが、技術の進化そのものは確実に進んでおり、将来的には業務形態が変わる可能性もあります。
こうした技術環境の変化を前に「今のままでは市場価値が下がるのではないか」「今のスキルが通用しなくなるのではないか」と不安を感じるエンジニアも少なくありません。
将来も評価されるエンジニアであり続けるために、今のうちからスキルの幅を広げようとキャリアアップを検討する人もいます。
運用保守エンジニアがキャリアアップするには?

運用保守エンジニアのキャリアアップには、大きく3つの選択肢があります。
- 運用保守を極める(スペシャリストタイプ)
- 運用保守のリーダー職を目指す(マネジメントタイプ)
- 開発系の職種を目指す(ゼネラリストタイプ)
それぞれに異なる魅力があり、自分の志向や得意分野に応じて最適な道を選ぶことが大切です。
運用保守を極める(スペシャリストタイプ)
「現場で運用保守を続けていきたい」「運用保守の仕事が好き」という人は、今の道を極めるのも1つの選択です。
ただし、日々の業務をこなすだけでは、技術者としての成長は頭打ちになりかねません。
現場での経験を活かしながらより高度な専門知識やスキルを身につけていくことが、ステップアップにつながります。
運用保守の現場では稼働しているシステムを的確に管理し、トラブル発生時には迅速に問題を解決することが求められます。
そのため、スペシャリストとして成長するにはシステムの構造や挙動に対する深い理解が欠かせません。
例えば、システムはサーバーやネットワークといった基盤の上で動いています。
障害の原因がどこにあるのかを見極めるには、ハードウェアや通信の仕組みなど、インフラ領域に関する知識が役立つでしょう。
運用保守で培った実践的な経験は、専門性を深める上で強固な土台となるはずです。
根本的な仕組みを理解することで問題解決の精度とスピードが向上し、スペシャリストとして活躍できるでしょう。
運用保守のリーダー職を目指す(マネジメントタイプ)
運用保守の経験を積む中で「個人の技術力」だけでなく「チーム全体の成果」に意識が向き始める人もいるでしょう。
そのような人は、マネジメントの役割を担う選択肢もあります。
現場を熟知している技術者は、チームの動きや課題を的確に捉える力があり、状況に応じて柔軟な判断や調整が可能です。
そのため、メンバーをまとめ、業務を円滑に進めるリーダー職でも力を発揮できるはずです。
また、マネジメントの経験を積むことで、業務の工程管理や人材育成、関係部署との調整など、より複合的なスキルが身につきます。
これらは将来的に、プロジェクトマネージャーやサービスマネージャーといった上位職への道を拓いてくれるでしょう。
運用保守の業務を通じて養われた冷静な判断力や、的確な優先順位の付け方は、マネジメント職においても欠かせません。
単なる技術者としてだけでなく、チーム全体の成果に責任を持つ立場になることで、視野が広がり、対応できる領域も着実に広がります。
開発系の職種を目指す(ゼネラリストタイプ)
一から何かを創り出す仕事に挑戦したい人には、開発系の職種を目指す道もあります。
開発と運用保守は性質の異なる業務ですが、運用保守の現場で培った知識は、開発においても大いに活かせます。
例えば、運用保守の経験から見える「実際に運用した時に困るポイント」を、開発段階から考慮できることは大きな強みです。
こうした視点を持つことで、単に機能を実装するだけでなく、運用後の安定性や保守性まで見据えた開発が可能になります。
DX化が進む中でゼネラリスト型の人材は、チーム全体の品質向上にも大きく貢献できるはずです。
運用保守でキャリアアップのために必要な知識・技術
どのキャリアパスを選ぶにしても、共通して求められる知識や技術があります。
- 幅広いIT知識
- コミュニケーション能力
- 全体を俯瞰して見る力
キャリアアップを実現するためには、これらのスキルを広く、そして深く身に付けていくことが不可欠です。
幅広いIT知識
運用保守の分野でキャリアアップを目指すには、特定の技術だけでなく、幅広いIT知識を身につけることが欠かせません。
目指すキャリアによって求められる知識は異なりますが、ネットワークやサーバー、ミドルウェア、データベースなど、複数の領域にまたがる理解が求められます。
こうした知識を持つことで、システム全体の構造や動きを把握できるようになり、業務の精度も自然と高まるでしょう。
障害対応や改善提案の場面でも、応急処置的な対応にとどまらず、根本的な課題の発見や対処が可能になります。
また、幅広い技術に触れることで、将来的に開発やマネジメントなど他職種への展開もしやすくなります。
技術の幅を広げながら全体を俯瞰する力を養うことで、キャリアの可能性は大きく広がるはずです。
コミュニケーション能力
キャリアアップに伴い、関わる人の数や関係性は徐々に広がっていきます。
現場のメンバーだけでなく、他部署や顧客、さらには経営層とのやり取りが発生する場面も少なくありません。
そのため、技術力だけでなく、相手の立場や状況を理解しながら業務を円滑に進める力が求められます。
報告・連絡・相談の徹底はもちろん、トラブル発生時の冷静な対応や、改善提案を行う力など、場面に応じた柔軟な振る舞いが信頼を築く鍵となります。
特に、非技術者である顧客や経営層に状況を説明する際には、専門用語をできるだけ避け、相手が理解しやすい言葉で丁寧に伝える工夫が必要です。
こうした配慮ができるエンジニアは、技術力だけでなくコミュニケーション面でも高く評価されるでしょう。
どれほど技術力が高くても、周囲との連携がうまくいかなければ、成果にはつながりません。
日頃から意識的に周囲とのコミュニケーションを大切にすることで、コミュニケーションスキルは自然と磨かれていきます。
全体を俯瞰して見る力
運用保守の業務において、システム全体を俯瞰する視点は、仕事の質と効率を高めるうえで欠かせません。
個々の作業に集中するだけでなく、全体の流れや構成を理解していることで、優先順位の判断や影響範囲の把握がしやすくなります。
またこのような視点は、マネジメントの場面でも大きな力を発揮します。
チーム全体の状況を冷静に見渡すことで、今の自分がどのような対応をすべきか、どこに支援が必要かを的確に判断できるようになります。
俯瞰する力は、一朝一夕で身につくものではありません。
日々の業務の中で、目の前の作業だけでなく「この作業が全体にどう関係しているか」を意識することで、少しずつ養われていくでしょう。
運用保守でキャリアアップしていける人の特徴
キャリアアップして活躍していくエンジニアには、いくつかの共通した特徴が見られます。
- 新しい技術を学ぶのが楽しい
- 原因究明・問題解決が得意
- 裏方として支えるのが好き
- 自ら役割を見いだせる
このような特徴に当てはまる人は、エンジニアとして成長し続けられる可能性が高いです。
新しい技術を学ぶのが楽しい
運用保守の分野でキャリアアップしていく人の多くは、新しい技術を学ぶことを前向きに楽しめる傾向があります。
IT業界はクラウドやAIをはじめ、あらゆる分野で日々進化を続けており、技術者には常に最新の知識とスキルが求められます。
そのため、新しいツールやサービスが登場するたびに、それらの仕組みを理解し、実際に使いこなせるようになるまで学び続ける姿勢が重要です。
例えば、新しいツールが登場したときに「また覚えることが増えて面倒だな」では成長は止まってしまいます。
「どんな機能があるんだろう」「今使っているものより便利になるかな」と前向きに捉える姿勢が知識の習得を支えます。
このように学びを楽しめる人は、技術革新の波に乗り遅れることなく、柔軟に対応しながらキャリアを発展させていけるでしょう。
「知らないことを知る」「できなかったことができるようになる」といった小さな達成感を積み重ねることで、学びは苦労ではなく、成長の喜びへと変わります。
変化の激しい業界だからこそ、楽しみながら学び続ける姿勢が、長く活躍するための原動力になります。
原因究明・問題解決が得意
運用保守の現場では、障害対応やトラブルシューティングが日常的に発生します。
そのため、突発的な不具合や予期せぬ挙動に対して、迅速かつ的確に対応する力が求められます。
その際に重要となるのが「なぜこの問題が起きたのか」「どうすれば解決できるのか」「再発を防ぐにはどうすればよいか」といった視点を持ち、冷静に考えて行動する力です。
その場しのぎの対処ではなく、根本原因に向き合い、再発防止まで見据えた対応ができる人材は、現場からの信頼も厚くなります。
複雑な課題に直面したときに、感覚ではなく論理的に状況を整理し、最適な対応策を導き出せる力は、運用保守に限らず、どのポジションでも重宝されるスキルです。
日々の業務の中で「なぜ?」を丁寧に掘り下げる習慣を持つことで、問題解決力は着実に磨かれていくでしょう。
裏方として支えるのが好き
運用保守の仕事は、トラブルが起きないことが理想とされる一方で、何も起きなければ目立ちにくく、評価されにくいという側面もあります。
目立つポジションではありませんが、縁の下の力持ちとしてシステムやチームを支えることに喜びとやりがいを感じられる人は、運用保守の仕事に向いているといえるでしょう。
また、責任感を持ち、地道な作業を着実にこなし続けられるタイプの人は、マネジメント職にも進みやすい傾向があります。
運用保守は、システムが正常に動いている状態こそが成功であり、その状態を維持するために日々細かい作業を積み重ねる仕事です。
このような仕事の本質を理解し、そこにやりがいを見出せる人は、運用保守のスペシャリストとして大きく成長していけるでしょう。
自ら役割を見いだせる
決められた業務を正確にこなす力も重要ですが、それだけではエンジニアとしての成長は止まってしまいます。
与えられた仕事を待つのではなく「今、自分にできることは何か」「現場をより良くするために何が必要か」を常に考え、行動に移せる人はどの現場でも活躍できるでしょう。
自ら役割を見いだし、責任を持って取り組む姿勢は周囲からの信頼を集め、自然とリーダー的な立場を任されるようにもなるでしょう。
運用保守の仕事は、決して派手ではありませんが、現場の安定を支える重要な役割です。
その中で自分の立ち位置を見極め、積極的に役割を果たしていける人は、着実にキャリアを築いていけます。
日々の業務の中で、小さなことからでも構わないので、自分から提案したり改善に取り組んだりする習慣を持つことが大切です。
監修者コメント

白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
SES企業だからこそ実現できるキャリアアップ
キャリアアップを考える際、進むべき進路を絞り切れない人もいるでしょう。
そのような方には、SES企業でエンジニアとして働くという選択肢もあります。
SESエンジニアは、様々なクライアント企業に常駐しながらプロジェクトに参画することで、多様な経験を積むことができます。
特に注目すべきは「まだキャリアの方向性が定まっていない」という段階でも、複数の分野の案件に携わりながら自分に合った道を見つけられる点です。
様々な案件を経験する中で「この領域が自分に合っている」と実感してから方向性を定めることができるため、リスクを抑えながらキャリアを模索できます。
ただし、案件選択の自由度はSES企業によって異なります。
企業によってはエンジニアに案件選択の権限がなく、会社都合で案件が割り振られるケースもあります。
案件選択の自由度やキャリア支援体制をしっかり確認することが大切です。
案件選択の自由度については「案件選択制度」という制度を導入している企業もあるため、注目してみてください。
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まとめ
運用保守エンジニアは、企業のIT基盤を支える重要なポジションです。
トラブルを未然に防ぎ、安定したシステム運用を維持するという役割は地味ながらも、システムを支えるために欠かせません。
一見すると単調に見える運用保守の業務の中にも、学べる技術や成長のチャンスは数多くあります。
キャリアアップを目指すなら、まずは自分がどのようなスキルを伸ばし、どんな形で活躍していきたいのかを考えることが大切です。
どの道を選んでも、運用保守の現場で培ったスキルは、確かな強みとして今後のキャリアに活かせるでしょう。
弊社ESESは、SES(システムエンジニアリングサービス)事業を展開する企業です。
SESとは、エンジニアがSES企業に属したままクライアント企業のプロジェクトに参画し、技術支援を行う働き方を指します。
幅広い現場経験を積みながら、様々なスキルを磨けるのがSESの特徴です。
ESESでは、エンジニアの働きやすさはもちろん、スキルアップやキャリアアップのサポートにも力を入れています。
エンジニア自身の希望や目指すキャリアに合わせて案件を選びながら、確実にステップアップしていける環境を整えています。
理想のキャリアに向かって、一歩を踏み出してみませんか。
あなたの挑戦を、私たちが全力でサポートします。










監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
プロフィールを見る
開発チームと運用チームが連携する「DevOps」
システム開発の現場では「DevOps(デブオプス)」という考え方が広まっています。
DevOps(デブオプス)とは、Development(開発)とOperations(運用)を組み合わせた造語です。
これは、開発チームと運用チームが密に連携してシステムを開発する手法を指します。
一般的にシステム開発の現場では、開発と運用は別々のチームに分かれていることが多いです。
ただ、開発側は「新機能の追加」を、運用側は「システムの安定稼働」を優先するため、開発中に両者が対立することも珍しくありません。
そこで、この壁を取り払い、開発と運用が協力して高品質なシステムを迅速に開発しようというのがDevOpsの目的です。
IDC Japanの調査によれば、DevOpsの実践率は年々上昇し続けており、DXが進行している企業ほど実践率が高い傾向がみられました。
運用保守の経験と開発スキルのどちらも身に着ければ、DevOpsを実践している企業でその強みを発揮できるかもしれません。