IT土方とはどんな仕事?見分け方とやるべきことも徹底解説!
目次
IT業界は将来性があり人材の需要も高く、時代の先端を行くスマートな業界に思えるかもしれません。
しかし、その裏ではいわゆる「IT土方」と呼ばれる人たちが、心身ともにきつい劣悪な環境で働いていることも事実です。
「IT土方」は、いくつかの条件に当てはまるIT人材を建築・土木業界の現場で働く人に例えた俗称で、ブラックな環境で働く人が自虐的に使うような言葉です。
人材不足のIT業界において、本来は大切にされるべき人材が、どうしてそのような働き方を強いられてしまうのでしょうか。
そこで今回は、IT土方と呼ばれる人の仕事な内容や、IT土方になりやす人の特徴、IT土方になりやすい企業の見分け方やIT土方にならないためにすべきことをご紹介します。
これからIT業界で働きたいと考えている人や「自分はIT土方なのでは?」と感じている人はぜひ参考にしてみてください。
この記事の監修者
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
株式会社ESES 代表取締役社長
1990年生まれ。埼玉県出身。SES業界を「“良い”SES」にするために業界No.1の立ち位置を目指す、株式会社ESESの代表取締役。人材サービス事業を行うUZUZ(ESESのグループ会社)において、営業部長や支店立ち上げを経て、最年少で執行役員に就任した経歴の持ち主。現在は、経営業務だけでなく、営業や採用にも幅広く従事し、SES業界に革新を起こすために日々奮闘中。
「IT土方」とは何か
「IT土方」とは、IT業界において次のような条件に当てはまる人たちの俗称で「デジタル土方」と呼ばれることもあります。
- 高いスキルを必要としない単純作業だけを担当する
- 多重請負構造の最下層に位置する
- 長時間労働を強いられる
- 低賃金で働かされる
IT業界は、元請け・2次請け・3次請け……といったような多重構造になっており、この構造は建設業界と似ています。
そのため、このような多層構造の最下層で働く人材を、建築・土木業界の現場で働く人と同じように例えて「IT土方」と呼ぶようになったのです。
肉体労働では「きつい・汚い・危険」のいわゆる「3K」がありますが、IT業界の場合は「きつい・帰れない・給料が安い」という「3K」が存在します。
IT土方という言葉は、当初プログラマーを指すことが多かったですが、最近ではルーティーン化された単純作業をする人材全般を広く示す言葉となっています。
IT土方の主な仕事内容
IT土方の仕事内容は、基本的に低スキルで単純作業の仕事がメインとなり、具体的には次のようなものが挙げられます。
- プログラムが正常に動くかのチェック
- システムの監視業務
- 簡単な修正作業
- コーディング
- データ整理
- マニュアル作成
これらの仕事を担当している人全員がIT土方というわけではありませんが、高いスキルを必要としない作業を担当することがほとんどです。
また、これらのIT土方の仕事は高いスキルを必要としないことから、人材の入れ替えが容易であることも大きな特徴です。
そのため、仕事も低単価のものが多く、IT土方の状態から抜け出すことができなければスキルアップもしにくく、将来は明るくないといえます。
「IT土方」と言われてしまう人の特徴
IT土方と言われている人の中には「とりあえず今生活できているからいい」「いずれは転職を希望するけど具体的には考えていない」といった人もいるでしょう。
また、まだIT業界で働いていない人であれば「業界的にそういう仕組みだから仕方ない」「未経験だからIT土方で当たり前」と考えている人もいるかもしれません。
確かに、IT土方と呼ばれる人たちがやっている業務は誰かがやらなければいけない業務です。
しかし、IT土方であることはメリットよりもデメリットの側面の方が大きいため、IT土方の状態が続くことは好ましくありません。
以下では、IT土方と言われてしまう人の特徴を解説します。
スキルが身につかない
IT土方の場合、単純作業や高いスキルを必要としない仕事がほとんどです。
そのため、IT土方を長く続けていてもスキルが身に付くことはありません。
IT業界でも「未経験者可」の求人がある理由はそのような仕事があるからだと考えられます。
すでにエンジニアとして働いている場合は、企業にスキルアップできる業務につけないか相談したり、転職を視野に入れなければキャリアアップは難しいでしょう。
下流工程しか担当しない
IT土方の場合、基本的に下流工程の単純作業をすることになります。
下流工程の作業はエンジニアでなくてもできるようなタイピング作業のような単純作業が多く、マニュアルがあれば知識がなくても行うことができます。
具体的な業務としては、コーディングやテストなどが挙げられ、最新の技術を使用する機会はほとんどありません。
仮に自分で学習して知識を身に付けていたとしても、それを活かせる機会はほとんどないといえるでしょう。
労働時間が長く、休日出勤もある
IT土方の業務は単純なものであるものの、作業量が膨大であることが少なくありません。
そのため、納期までに終わらせるように、残業や休日出勤もして仕事をすることになります。
このような、納期に間に合わせるために残業や休日出勤で切り抜けることは「デスマーチ」と呼ばれており、IT土方になるとデスマーチの遭遇率がぐっと高くなります。
プロジェクト全体の予算はあらかじめ決まっています。
そのため、安価でIT土方を使うことでデスマーチを乗り切ることになり、結果的にIT土方の労働時間が長くなってしまうのです。
深い商流で働いている
IT土方は基本的に深い商流で働くことになります。
つまり、元請けから離れている分、マージンがどんどん引かれ、低い単価で仕事を請け負うことになるのです。
そして、結果的にエンジニアに還元される給料も低くなってしまい、元請け企業のプログラマーなどと比較すると収入は少なくなる傾向があります。
未経験や経験が浅いうちは「これくらいの給与でも仕方ない」「こんなもんだ」と思っていても、IT土方から抜け出さなければ収入の大幅なアップは期待できません。
IT土方の可能性あり!企業の見分け方
現在のIT業界は、IT土方と呼ばれる人たちの下支えによって成り立っていることは事実です。
とはいえ、IT土方の状態が継続することは、エンジニアとしてキャリアアップをしていく上では避けるべきです。
IT土方の状態が継続することを回避するためには、どのような企業に所属しているかが大きなポイントとなります。
以下の条件を基準に考え、企業に入ると必ずIT土方になるというわけではありません。
しかし、企業選びをする際や、現在所属する企業の判断材料の一部として、IT土方になりやすい企業のポイントをチェックしておきましょう。
給与額が平均に比べて低い
IT土方になりやすい企業は、下流工程の案件が多いことや深い商流であることなどが理由で、給与が低くなりがちです。
まずは他の求人などと比べてみて、給与額が低すぎないかを確認しましょう。
さらに、20~80万円など、提示している給与に幅がある場合も注意が必要です。
このような提示の仕方をしている企業の多くは下限の金額からスタートし、ほとんど昇給しないことも少なくありません。
応募ハードルの低い求人が多い
特に「未経験歓迎」「充実の研修」など、応募ハードルの低い求人が多い企業には注意が必要です。
入社すると業務の範囲が狭く、マニュアルや設計書通りに作業をするだけの業務ばかりの可能性があります。
それどころか、労働環境が悪く、常に人材が不足している状況にあることも考えられるでしょう。
とはいえ、未経験者や経験の少ないエンジニアの場合は、そのような企業に入社せざるを得ないこともあります。
その場合でも、まずはキャリアプランを立てておき、IT土方の状態が続きそうな場合は早めに転職を考えましょう。
IT土方にならないためにやるべきこと
エンジニアとして働き続けたいと考えるのであれば、スキルアップができず長時間労働が強いられやすいIT土方になってしまうことは避けたいものです。
ただし、未経験者や経験の浅いエンジニアがキャリアプランを考えないまま下流工程に携わり続けた結果、気づけばIT土方になっているケースも少なくありません。
IT土方にならないためには、企業選びだけではなく、自ら動くことも大切です。
以下では、IT土方にならないためにやるべきことをご紹介します。
基本スキルをきちんと習得する
IT土方にならないためには、基本的な知識や技術を身に付けておくことが大切です。
「未経験歓迎」「社内研修が充実」などとアピールしている企業だからといって、何もせずに入社してしまうと、与えられた仕事しかできなくなってしまいます。
自分で基本的なスキルを身につけておけば、自分がどれくらいのレベルの仕事をしているのかにも気づきやすく「〇〇ができる案件に参画したい」といった交渉もできます。
「IT土方は単純作業が多いから、難しいスキルを身に付けておけばいいのでは?」と思われがちですが、基礎を固めておかないとレベルアップはできません。
幅広い知識・技術を身に付ける
IT土方の仕事の多くは基本的にマニュアルがあったり簡単な勉強をすれば誰にでもできる仕事です。
「このままではIT土方になるかも」と感じた場合は、業務とは別に自分で新しい技術や知識について学習をしましょう。
なぜなら、現状よりもレベルの高い案件や難しい案件も担当するためには、様々な知識や技術を身に付けておく必要があるからです。
IT業界は新しい技術や流行などもあり、日々変化しているため、変化に対応できるよう、自主的に学習を続けることも必要です。
なお、自主的に学習をするのであれば、知識や技術の証明として、国家資格やベンダー資格を取得することをおすすめします。
企業の情報収集をする
IT土方にならないためには、就職や転職する企業を見極めることも大切です。
先程ご紹介した「IT土方の可能性あり!企業の見分け方」も参考に、自分が働きやすいと感じる企業を選んで応募しましょう。
なお、企業情報を調べる際には基本的に自社サイトや求人サイトなどネットで調べることがメインとなるはずです。
ネット上には、元社員などが口コミしていることもあるため、それらも判断材料の一つになるはずです。
どのような条件があれば働きやすいかは人それぞれ異なるため、まずは自分にとって譲れない条件を3つ程度に絞り、企業の情報収集をし、比較・検討しましょう。
監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
企業を選びでは比較は必須
IT土方にならないためには、いわゆる「ブラック企業」か否かが大きなポイントとなります。
ブラック企業を見分けるためには、企業が提供している情報や口コミといった様々な情報を集め、他社と比較することは欠かせません。
なぜなら、ブラック企業の中には、少しでも応募者を増やしたいという目的から見ようによっては好条件とも受け取れる募集内容を記載していることがあるためです。
他の企業と比較しなければ、その企業が異質であることに気づかず、募集内容だけを見て応募してしまう可能性があります。
仕事内容に対して妥当な給与か
似たような悪い口コミが多くないか
不明点を質問した際にきちんと回答があるか
特に上記のポイントを中心に複数社をピックアップして、比較をしながら応募する企業を選びましょう。
まとめ
IT土方とは、主に単純作業を低賃金・長時間で強いられている人たちのことを指す言葉です。
3次請け・4次請けなど、下請け企業が全て環境が悪いというわけではありませんが、自分が理想とするキャリアプランに近づけるために就職先選びは重要です。
本記事でご紹介した企業の見分け方ややるべきことを参考に、IT土方にならず、自分が納得のできる働き方を探してみましょう。
弊社ESESはSES企業です。
SES企業では下請けの案件が多い点が特徴ですが、ESESでは次のような取り組みを行うことでエンジニアにとって働きやすい労働環境を提供しています。
- 高還元(現在73%)
- 透明性があり、納得度の高い報酬体系
- キャリア選択の自由
さらに、これら以外にも、今後も継続してエンジニアの労働環境の改善に取り組み続けます。
下流工程やテストなどの簡単な作業を担当する人自体は、IT業界にとっては必要な存在です。
ただし、低賃金や長時間労働といった労働環境の課題が多いことも事実です。
弊社はエンジニア自身が自分の働き方に誇りをもち「IT土方」という言葉を使う世の中を変えられるよう、活動を続けています。
企業選びに迷っている方は、ぜひESESも選択肢の一つとして検討してみてください。
監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
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気づかない間にIT土方になっていることも
未経験や経験が浅い状態からエンジニアになった場合、IT土方と同じ状態になることは少なくありません。
未経験や経験が少ないうちは避けて通ることができない道ともいえますが、例えば、次のような状況が何年も続くようであれば注意が必要です。
土日出勤や休日出勤がある
深夜勤務をすることがある
所属する企業が孫請け案件を受注している
単純な仕事をする状態が続いている
年収が350万円を超えない
自分がIT土方であることは体力・気力的にも余裕のある若いうちは、気づきにくいことも少なくありません。
しかし、年齢を重ねると体力的にもきついだけではなく、スキルアップ・キャリアアップしていく若手と比較するようにもなるため、精神的にもきつくなりがちです。
「このままではIT土方の人生かも……」と思ったら、所属する企業に相談したり、転職を考えることをおすすめします。