「SESはやめとけ」って本当?そういわれる理由と企業の見極め方を解説
目次
SESについてインターネット上で調べた際に「やめとけ」「ブラック」などと言われているのを目にしたことはありませんか。
たしかに、ブラックなSES企業も存在しますが、すべてのSES企業がブラック企業ではありませんし、中にはホワイトなSES企業も存在します。
この記事では、SESが「やめとけ」と言われる理由や、ブラックなSES企業を見分ける方法について解説します。
SESという働き方が合うかどうかは、人によって異なるため、この記事を読んで、自分にSESという働き方は本当に向いていないのか確かめましょう。
この記事の監修者
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
株式会社ESES 代表取締役社長
1990年生まれ。埼玉県出身。SES業界を「“良い”SES」にするために業界No.1の立ち位置を目指す、株式会社ESESの代表取締役。人材サービス事業を行うUZUZ(ESESのグループ会社)において、営業部長や支店立ち上げを経て、最年少で執行役員に就任した経歴の持ち主。現在は、経営業務だけでなく、営業や採用にも幅広く従事し、SES業界に革新を起こすために日々奮闘中。
SESはやめとけと言われる理由5選
この記事を読んでいる人の中には、「SESはやめとけ」と言われたために、SESで働くことや働き続けることを迷っている人もいるでしょう。
そもそも、なぜ「SESはやめとけ」と言われているのでしょうか。
主な理由として以下の5つが考えられます。
- 収入が低くなりがち
- 案件によってはスキルアップできない
- 環境の変化が大きい
- 常駐先によっては待遇が悪い
- 契約内容がブラック
以下に詳しく解説します。
1.収入が低くなりがち
SESはやめとけと言われる第一の理由は、収入が低くなりやすいからです。
SESエンジニアの収入が低くなる原因は、主に以下の3つが考えられます。
SESは下請けの案件が多いため
SESは下請け業務が多い傾向にありますが、このような案件はスキルや知識をあまり必要とせずに取り組めます。
そのため報酬が低く設定されているケースも珍しくなく、収入が低くなってしまいます。
企業によっては、無駄な商流を入れて多くマージンを取っているため
SESの案件は、3次請け4次請けといった商流になる場合もありますが、間に入る企業が増えるほど、仲介手数料やマージンは増加します。
理由があって深い商流になる分には問題ないのですが、中には無駄な商流を挟むことで、企業が多くマージンを抜いているケースも存在するのです。
その結果、エンジニアが受け取る報酬が低くなってしまいます。
SES企業によっては待機時に給料がカットされるため
案件と案件の間に空白の期間ができることを「待機」と呼びますが、この待機期間の給料は企業によって扱いが異なります。
例えば、待機中も月収を保証してくれる企業もあれば、月収の一部あるいは全額カットする企業もあるのです。
後者のようなSES企業に就職してしまった場合、他のエンジニアよりも収入は低くなってしまいます。
2.案件によってはスキルアップできない
下請け業務はエンジニア初心者でも取り組みやすい一方で、企業によっては長年働いても、そのような案件ばかりを任される場合があります。
もちろん、企業に案件の要望を伝えることで、状況が解決することもあります。
しかし、ワンマンなSES企業であると、要望を伝えても下請け業務ばかり任されることがあるのです。
その結果、仕事を通じて専門技術を身につけられず、スキルアップの機会を逃してしまいます。
さらにスキルが身につかない企業で長期間働き続けてしまうと、その後の転職も難しくなり、より苦しい状況に陥ってしまう可能性もあります。
このように、エンジニアのスキルアップが見込めない企業が一部紛れているために、「SESはやめとけ」と言われてしまうのです。
3.環境の変化が大きい
環境の変化が大きいことも、「SESはやめとけ」と言われる理由の一つです。
SESは案件が変わるたびに、仕事内容や周りの人間関係が大きく変化します。
場合によっては数か月で次の派遣先に移るケースもあり、1年間の中で何度も環境が変わることもあり得ます。
新しい人との出会いや、職場環境の変化を楽しめる人であれば、この特徴はメリットになりますが、環境変化に順応するのが苦手な人には大きなストレスになるでしょう。
また、環境変化にある程度順応できる人でも、自身に全く合わない環境に派遣されてしまった場合は、強いストレスを抱えてしまうこともあります。
4.常駐先によっては待遇が悪い
先程も述べたとおり、SESは案件が変わると常駐先も変わります。
それに伴いエンジニアに対する待遇も変化しますが、中には待遇の悪い企業も存在するのです。
例えばSESエンジニアに対して、単純作業を多く割り振る、自社の社員と扱いに差をつけるなど、あからさまに態度を変える企業もあります。
エンジニアに対する扱いは、実際にSESとして派遣されなければ分からないことが多いのが実情です。
「常駐先で必要以上に苦労する可能性があるなら、SESはやめておこう」と考えるエンジニアも珍しくありません。
5.契約内容がブラック
クライアントとブラックな契約を結ぶSES企業もあるために「SESはやめとけ」と言われることもあります。
SES企業はクライアントとの間で「準委任契約」を結ぶのが一般的です。
しかし「準委任契約」を結んでいるはずなのに、実態は「派遣契約」だった、というケースが稀にあるのです。
この「準委任契約」と「派遣契約」は、エンジニアに対する指揮命令権の所在が異なります。
「準委任契約」では指揮命令権がSES企業にありますが、「派遣契約」では指揮命令権はクライアントにあります。
そのため、本来ならばする必要のない残業を、クライアントの指示で強制的に命じられるなどのトラブルが起こってしまうのです。
このように「準委任契約」を結んでいるにも関わらず、実態は「派遣契約」であるものを「偽装請負」といいます。
近年は、エンジニアに対する待遇を見直す企業も増えており、偽装請負を行う企業も減っていますが、残念ながら0ではないのが実態です。
そもそもSESとは?
ブラックな印象を持たれやすいSESですが、そもそもSESとは何なのでしょうか。
SESとはシステムエンジニアリングサービスの略称で、システムの開発・保守・運用などの業務において、エンジニアを派遣する契約形態のことです。
システム開発業務の中でエンジニアを必要とする企業が、エンジニアを抱える企業(SES企業)に人材の派遣を依頼し、プロジェクトを進めます。
そして契約が終了すると、SESエンジニアは次の案件に移るのです。
このようにSESエンジニアは、様々な企業に赴き、多種多様な業務に携わることで、幅広い知識やスキルを身につけられるという特徴があります。
そんな特徴を持つSESですが、なぜこれほどまで「やめとけ」と言われているのに、なくならないのでしょうか。
これは、IT業界の人材不足問題が深く関係しています。
現在、日本のIT業界は慢性的な人材不足に陥っています。
しかし、解雇規制が厳しい日本では、企業によってはエンジニアの直接雇用に大きなリスクが伴うのです。
そのため、必要な時だけエンジニアを確保できるSESを利用する企業は非常に多く、今後も高い需要が見込まれています。
以下の記事では、SESの全体像についてより詳しく解説しています。
SESの働き方やメリット・デメリットなどについて知りたい方は、以下の記事も合わせてご確認ください。
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SESエンジニアの労働環境は、SES企業によって左右される
SESエンジニアの働き方は、一概に「悪い」とは言い切れません。
「SESはやめとけと言われる理由5選」で説明した理由が、すべて当てはまらないSES企業も存在します。
「SESはやめとけ」と言われるのは、エンジニアの待遇が悪いSES企業が存在しているためであり、SESの働き方自体は悪くないことを覚えておきましょう。
そんな中、近年「新SES企業」と呼ばれる企業が注目されています。
「新SES企業」とは、エンジニアの待遇を改善し、働きやすい環境を整えているSES企業のことです。
具体的には、顧客から提示された単価が報酬に反映される「単価評価制度」や、エンジニアが自分で案件を選べる「案件選択制度」などを取り入れています。
SESへの就職を検討しているのであれば「新SES企業」を中心に企業探しをすることをおすすめします。
やめとけと言われるSES企業の特徴5選
「SES」という働き方自体はブラックではありませんが、「ブラックなSES企業」というのは残念ながら存在します。
この章では、思わず我々も「やめとけ」と言いたくなるような、怪しいSES企業の特徴を5つご紹介します。
- 単価や還元率を開示していない
- 評価基準が曖昧
- ネガティブな口コミが多い
- 会社情報があまり公開されていない
- 企業自体が成長していない
このような特徴を持っているSES企業は要注意です。
それぞれについて以下に詳しく解説します。
1.単価や還元率を開示していない
ホームページや求人情報などに、単価や還元率を開示していない企業には注意が必要です。
もちろん、単価や還元率を開示していない企業すべてがブラックというわけではありませんし、優良企業でも公開していないケースはあります。
とはいえ、そのような企業に就職した場合は、自分の単価や年収が市場に対して適切であるか定期的にチェックし、収入に違和感がないか確かめることをおすすめします。
ちなみに、2023年時点におけるSES業界の平均還元率は約60%です。
もしも応募を検討している企業の還元率が60%を大幅に下回っている場合は、エンジニアの待遇が悪い可能性があるため、慎重に判断しましょう。
2.評価基準が曖昧
エンジニアの評価基準が曖昧である企業にも気を付けましょう。
このような企業では、エンジニアの評価基準がブラックボックス化されやすく、その結果、エンジニアに還元される報酬が相場を下回る可能性があります。
反対に、評価基準が明確であれば、自分の収入に納得しながら勤務できます。
また会社からの評価を高めたい人にとっては、目指すべき目標が明確になるのは良いことです。努力の方向性が定まり、仕事に対するモチベーションも向上するでしょう。
3.ネガティブな口コミが多い
企業口コミサイトもチェックすると良いでしょう。企業口コミサイトとは、収入や労働条件、仕事のやりがいなど、様々な側面から企業の評価を書き込めるサイトのことです。
口コミサイトに評価を書き込めるのは、基本的に現在働いている社員または元社員のため、最近は就職や転職時に、企業の実態を知る手段の一つとして活用されています。
もしも口コミサイトにネガティブな投稿が多いならば、その会社に不満を持つ現社員や元社員が大勢いると考えられるので、その企業への就職は慎重に判断しましょう。
ただし匿名で書き込みができるという口コミサイトの特性上、ポジティブな意見よりも、ネガティブな意見が集まりやすいことも事実です。
そのため、良い口コミよりも、悪い口コミを見たときに「それでもこの企業で働きたい」と思えるかが大切です。
あくまで口コミサイトは、企業を知る手段の一つとして活用し、すべてを鵜呑みにしないよう気をつけましょう。
4.会社情報があまり公開されていない
ホームページ上で会社情報があまり公開されていない企業には注意が必要です。
「以下の項目をすべて公開していなければブラック企業」というわけではありませんが、公開されていない情報が多いほど信用に欠けるのは事実です。
- 売上の推移
- 従業員数の推移
- 還元率
会社情報を公開していないのは、何か載せられない理由があることを覚えておきましょう。
また情報を集める際は、企業のホームページだけでなく、外部の公的なサイトも利用するのがおすすめです。
例えば「年金機構」のホームページから「事業所検索」で会社名を検索すると、事業所の所在地や社員数などの情報を得られます。
企業のホームページと比較し、年金機構に掲載されている情報や数値に相違がないか確認しましょう。
もしも情報に大きな乖離があった場合、企業が情報を偽っている可能性もあるので、注意が必要です。
5.企業自体が成長していない
会社自体が成長しているかどうかも重要なチェックポイントです。
SESはエンジニアをクライアント企業に派遣するビジネスモデルであるため、SES企業の社員数が増えていないということは、会社が成長していない可能性があります。
特にブラックなSES企業では、社員数が横ばい、もしくは減っているケースが多く見られるので、企業を調べる際は社員数の推移にも注目すると良いでしょう。
SES企業の社員数が伸びていない理由としては、以下の2つが考えられます。
- 離職率が高く、採用者の人数と辞めた人数が同程度、あるいは辞めた人数の方が多いため
- 会社の業績が悪く、人員を増やせないため
「SESはやめとけ」と言われるエンジニアの特徴3選
SESという働き方が合うかどうかは、人によって違います。
誰かが「SESはやめとけ」と思っていても、自分には合っている可能性もあるのです。
そのため、人の意見だけで決めるのではなく、自分にSESという働き方が合うかどうかを考えてから決断することが大切です。
ここではSESが向いていないエンジニアの特徴を3つ解説します。
- 高度な開発案件だけを担当したい
- 携わったサービスの成果を見届けたい
- 新しい環境になじむのが苦手
自身に当てはまる特徴はあったでしょうか。
以下に詳しく解説します。
1.高度な開発案件だけを担当したい
「高度な開発案件だけを担当したい」と考える人にSESはおすすめできません。
SESは、案件ごとに具体的な業務内容が変わります。上流工程の案件を担当することもあれば、下流工程を担当することもあるでしょう。
もちろんSESでも高度な開発案件を担当する機会はありますが、もしも「高度な開発案件だけ」を担当したい場合は、自社開発やSlerの方が向いています。
監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
SESも高度な開発案件に携われる
ただし、一部例外もあります。
それは、SES企業に「案件選択制度」が導入されていて、エンジニア自身も高度な技術を身につけているケースです。
「案件選択制度」とは、担当する案件をエンジニア自身が自由に選べる制度のこと。
この制度が導入されているSES企業であれば、自分で好きな案件を選べます。
とはいえ、これはあくまで「エンジニアが受けられる技術の範囲内で」自由に選ぶ制度です。
上流工程を選ぶためには、エンジニア自身も高度な技術を身につけている必要があります。
2.携わったサービスの成果を見届けたい
携わったサービスの成果を見届けたい人にも、SESはおすすめしません。
通常SESは、一時的なエンジニア不足解消のために業務を依頼されることがほとんどです。
決められたプロジェクトが終わればSESの参画も終了し、システム完成の有無に関わらず、エンジニアは次の現場へ向かいます。
そのためSESエンジニアは、一つのシステム開発に最後まで参加し、サービスの運用を見届ける機会がほぼありません。
「会社やチームに帰属意識を持ちつつ、最初から最後までシステムを見届けたい」と考える人にSESは向いていないでしょう。
3.新しい環境になじむのが苦手
SESが向いていない人の特徴3つ目は、新しい環境になじむのが苦手な人です。
繰り返しになりますが、SESは案件ごとに職場が変わります。
どんなに良いクライアント先でも、プロジェクトが終わったら次の現場へ移らなければなりませんし、毎回良い出会いに恵まれるとは限りません。
人間関係を一から構築するのが苦手な人や、腰を据えて仕事をしたい人にとって、SESの働き方は負担が大きいでしょう。
やめとけといわれるSES企業を避けるための2大ポイント
いわゆる「ブラック」と呼ばれるような企業や、ブラックでなくとも自分に合わないSES企業は一定数あります。
そのような企業を避け、自身に合った職場を見つけるためには、以下の2点を押さえて企業選びをすることが大切です。
- 応募する企業を見極める
- キャリアプランや希望条件を明確にする
以下に詳しく解説します。
1.応募する企業を見極める
まずは、応募する企業をじっくり見極めましょう。
おすすめなのは、企業が導入している制度や、公表している数値などに着目して、企業探しをすることです。
SES企業には以下のような制度を取り入れているところもあります。
自身の働き方に合った制度を設けている企業は、積極的にチェックしましょう。
- 単価評価制度:クライアントから提示された単価を元にエンジニアの報酬が決まる制度
- 案件選択制度:担当する案件をエンジニア自身が選ぶ制度
- 高還元率:業界平均は60%ほど、高還元は70%以上
上記のような制度を取り入れて、エンジニアが働きやすい環境を提供しているSES企業が近年増えています。
このようなSES企業は「新SES企業」と呼ばれ、私たちESES(イーエス)もその一つです。
ESESは「エンジニアファースト」を目標に掲げたSES会社であり、上記三つの制度も導入しておりますので、SESへの転職をお考えの方は、ぜひご検討ください。
2.キャリアプランや希望条件を明確にする
企業選びの際に、キャリアプランや希望条件を明確にしておくことも大切です。
SESは案件によって業務内容や職場が変わりますが、何も考えずに案件を受け続けているだけでは、スキルアップやキャリアアップの機会を逃してしまうことがあります。
加えて、技術や実績がないと「担当したい案件を受けられない」「収入が伸びない」といった悩みを抱える可能性もあるでしょう。
そうならないためにも、自分のキャリアプランや希望条件を整理して、SES企業に伝えておくことが大切です。
SESエンジニアとして働くにあたって、特に整理しておくべき条件は以下のとおりです。
- 仕事内容
- 身に付けたいスキル
- 給与や賞与
ただし、経験年数や実績によっては希望条件が通らないこともあります。
特にエンジニア経験が1年以内の人は、まず実績を積み、仕事への理解を深めてから整理した方が、より明確で現実的なプランを立てやすくなります。
この記事のまとめ
ブラック企業と呼ばれるようなSES企業も残念ながら存在しており「SESはやめとけ」と言われることもあります。
その一方で、エンジニアの待遇改善に努める動きがSES業界内にあり、働きやすい企業が増えているのも事実です。
就職において「その業界の印象」も大切ですが、働くうえで大切なのは、その仕事が「自分に合うか」と「働きやすいか」です。
今回ご紹介したポイントを押さえて、自身に合った働き方や企業を見つけましょう。
ちなみに、弊社ESESも「新SES企業」の一つです。
「単価評価制度」「案件選択制度」「高還元率」を取り入れ、エンジニアが働きやすい環境を作っています。
エンジニアの満足度を高めるために、今後も継続的に環境改善に取り組みますので、弊社に興味を持たれた方は、ぜひ以下のリンクより詳細をチェックしてくださいね。
監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
プロフィールを見る
SESで働くなら、きちんと準委任契約を理解しておこう
「準委任契約」とは、特定の目的を達成することを定めた契約を指します。
具体的な例を挙げると、顧客の業務を手伝うことや、顧客の代わりに業務遂行することが「準委任契約」に該当します。
また、先程「準委任契約はSES企業に指揮命令権がある」と説明しましたが、この契約にはもう一つ大きな特徴があります。
それは「準委任契約」には成果品を納める義務がないことです。
つまり、準委任契約であるSESとは、あくまでクライアントにエンジニアの労働力を提供する働き方。
常駐先の業務で携わったシステムなどを必ずしも完成させる義務はないのです。