SESの引き抜きはバレる?トラブルになるケースやオファーを受けた際に考えるポイントを解説
目次
SES業界において、引き抜きは珍しいことではありません。
また、法律で「職業選択の自由」が保障されているため、引き抜き自体は違法ではありません。
【日本国憲法 第22条第1項】 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。 |
引用:e-GOV 法令検索「日本国憲法」
とはいえ、引き抜きがあった場合に、会社との関係が悪化することを気にする人は少なくないはずです。
そこで今回は、引き抜きがバレる可能性や、引き抜きがバレてトラブルになるケースなどを解説します。
加えて、引き抜きのオファーがきた際に考えるべきポイントも紹介しますので、引き抜きで悩んでいるエンジニアの方は決断する際の参考にしてください。
この記事の監修者
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
株式会社ESES 代表取締役社長
1990年生まれ。埼玉県出身。SES業界を「“良い”SES」にするために業界No.1の立ち位置を目指す、株式会社ESESの代表取締役。人材サービス事業を行うUZUZ(ESESのグループ会社)において、営業部長や支店立ち上げを経て、最年少で執行役員に就任した経歴の持ち主。現在は、経営業務だけでなく、営業や採用にも幅広く従事し、SES業界に革新を起こすために日々奮闘中。
SESで引き抜きが起こる理由
そもそも、SESで引き抜きが起きる理由としては、大きく以下の3つの理由が挙げられます。
- 優秀なエンジニアでも費用をかけずに採用できる
- エンジニア経験者の採用が難しい
- エンジニア側から転職の相談をされる
現在、IT業界全体において人材不足が慢性化しているため、高い技術力を持っているエンジニアや経験豊富なエンジニアを探すのが難しい状況にあります。
そのため、すでに経験やスキルのあるエンジニアを採用できれば、企業にかかる育成コストも削減できるというメリットがあるのです。
また、SESエンジニア側においても、キャリアアップや現職とのミスマッチなどの理由で転職を考えているケースは少なくありません。
そのため、企業とエンジニアの需要・供給のタイミングが合えば引き抜きの話に発展するというわけです。
引き抜きはバレる?
結論から言うと、引き抜きが会社にバレる可能性は高く、隠すのは難しいといえます。
同僚や顧客を通じて伝わったり、退職理由や転職先についての情報が漏れてしまうことで、結果として引き抜きがあったことがバレてしまうのです。
繰り返しになりますが、引き抜き自体は違法なことではありません。
引き抜きによる転職をするのであれば、円満に退職し、元の会社と良好な関係を維持することが大切です。
引き抜きがバレると違法行為とみなされる?
冒頭にお伝えしたとおり、SESの引き抜きは原則OKであり、違法ではありません。
なぜなら、法律上、エンジニアには「職業選択の自由」が保証されているからです。
【日本国憲法 第22条第1項】 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。 |
引用:e-GOV 法令検索「日本国憲法」
まずはこの事実をしっかりと念頭に置いておきましょう。
ただし、全ての引き抜きが許されるわけではないのも事実です。
次は、引き抜きが原因でトラブルになるケースを事例を交えてご紹介します。
引き抜きがバレてトラブルになるケース【エンジニアに問題あり】
エンジニアが引き抜きによって転職しても、基本的に問題はありません。
ただし、以下のような場合はトラブルに発展することもあるため注意が必要です。
- 退職前から転職先の仕事をしている
- 同僚も一緒に引き抜く
- 社会通念から逸脱した場合
退職前から転職先の仕事をしている
先述の通り、エンジニアには「職業選択の自由」がある一方で「誠意義務」もあります。
誠意義務とは「使用者(所属する会社)の正当な利益を、不当に侵害しないよう配慮する義務」のことです。
退職前から引き抜き先の業務を行うことは、会社の利益を不当に侵害する可能性のある行為であるため、適切ではありません。
そのため、引き抜き先に転職することが決まっていても、退職前の場合は引き抜き先の仕事をすることは控えましょう。
同僚も一緒に引き抜く
引き抜きを打診されたエンジニア本人が引き抜きされるだけでなく、他の同僚も誘って一緒に転職することはNG行為です。
同僚と同時に転職することで、元会社のプロジェクト進行に支障をきたしたり、残ったチームメンバーに過度な負担がかかる可能性があるためです。
極端な例を上げると、大量に引き抜きが行われた場合、引き抜かれる企業の企業活動を脅かす事態にもなりかねません。
そうなると、退職後の関係性を良好に保ちづらくなり、引き抜いた側の企業活動にも影響を及ぼしたり自分自身も働きにくくなってしまうため注意が必要です。
特に業界が狭い場合、自身の評判や信用に影響を与えかねないため、引き抜きを打診された場合でも、同僚などに相談することなく検討した方が安心でしょう。
社会通念から逸脱した場合
前提として、引き抜きされた会社が、引き抜きで転職した従業員へ損害賠償請求することはできません。
ただし、社会規範を大きく逸脱した場合は違法になる可能性もあるため注意が必要です。
実際に損害賠償請求が起こった事例の代表的なものとしては以下のケースがあります。
- 労働者が入社後すぐに退職したことで、会社が多額の損害を受けた
- 会社の重要機密を握って、競業先に引き抜かれていった
競合企業への転職は原則として問題ありませんが、上記のような状況になっていないかは注意が必要です。
引き抜きがバレてトラブルになるケース【転職先企業に問題あり】
引き抜きをされて転職が成功しても、その後引き抜かれた先の会社が在籍していた会社から訴えられたら大変です。
例えば、以下のような場合は悪質な行為とみなされ、在籍していた会社から訴えられる可能性があるため注意しましょう。
- 引き抜きに計画性があった
- 多くの社員を同時に引き抜いた
- 過去に元会社に在籍していた役職者が引き抜いた
引き抜きに計画性があった
計画性があると、悪質であると判断されがちです。
例えば、次のような場合は「計画的」とみなされる可能性があります。
- 長期に渡り転職するよう提案し続けていた
- 引き抜かれる前の会社に情報が漏れないように工面していた
- 退職の時期や入社した際の条件などを事前に細かく説明していた
「うちの会社で働いてみない?」といった程度の声掛けなら訴えられることは少ないと考えられます。
しかし、上記の例のように緻密に計画をしていた場合は訴えられる可能性があるのです。
多くの社員を同時に引き抜いた
一度に多くの社員を引き抜いた場合、引き抜かれた側の会社の損害は非常に大きく、悪質な手口といえます。
過去には実際に、以下のように違法となり、最終的に1,500万円以上の損害賠償請求になった判例もあります。
【東京コンピュータサービス事件(昭和63年・東京地裁)】 コンピューター技術者の派遣業務を目的とする会社の幹部従業員が、在職中に、新会社設立を企て、退職後に右会社の従業員を引き抜いて、会社に損害を与えたとして損害賠償を請求された事例(請求一部認容)。 |
引用:全国労働基準関係団体連合会「東京コンピューターサービス株式会社事件」
引き抜き後の条件が好条件だった場合、引き抜かれる本人にとっては嬉しいことではあります。
しかし、同時に大量の引き抜きを行うことは社会通念上タブーであることを理解しておきましょう。
過去に元会社に在籍していた役職者が引き抜いた
過去に在籍していた役職者が、自分の引き抜き後に他の社員を引き抜くというケースです。
実際にあった以下の事例では、損害賠償にまで発展しています。
【ラクソン等事件(昭和62年・東京地裁)】 従業員の引き抜き行為につき、引き抜きをした競業企業と元営業本部長に対する不法行為による損害賠償請求が認容された事例。 |
引用:全国労働基準関係団体連合会「ラクソン等事件」
この事件では、前職で地位のあった元営業本部長が競業企業へ転職した後、同企業へ元会社の従業員を大量に引き抜きました。
一般の従業員より、影響力のある役員や地位の高い人が引き抜きをすることは問題になりやすいのです。
監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
引き抜きされるデメリット
引き抜きのオファーは魅力的に見え、エンジニアにとってメリットが大きく見えがちですが、必ずしもメリットばかりではありません。
引き抜きされるデメリットとしては、大きく以下の4点が挙げられます。
・会社間でのトラブルに巻き込まれる可能性がある
・元上司や同僚との関係に異変が起こる
・現在の業務よりも責任が重くなる
・今まで以上に忙しくなる可能性がある
会社間でのトラブルに巻き込まれる可能性については、前述したとおりですが、自分が上手く立ち回らなければトラブルにつながる可能性もあるため注意が必要です。
引き抜きされた会社が、元の会社と取引を続けている場合は、元上司や同僚と職場で遭遇することもあるでしょう。
退職の仕方によっては、そのような際に「裏切り者」といった態度をとられるかもしれません。
引き抜きをされる場合、基本的にその企業の正社員として働くことになりますが、常駐していた頃よりも仕事の責任が重くなる可能性が高くなります。
また、常駐していた頃よりも仕事量が大幅に増える可能性もあるため、引き抜き=メリットばかりではないという点はきちんと理解しておきましょう。
引き抜きでトラブルにならないために気をつけること
引き抜き自体は違法ではありませんが、最低限のマナーや両企業の立場などを考えて行動することが大切です。
- オファーの話は内密にする
- 相手都合の退職はしない
- 現職の規則は守って退社する
ここまでご紹介してきたトラブル事例を理解した上で、自分が引き抜きにあった際、トラブルに巻き込まれないために気をつけるべきことを覚えておきましょう。
オファーの対応は適切に行う
引き抜きの話があった後は、その事実を内密にしたり、適切に対処しない場合は会社間の問題へと発展しかねません。
一度揉めてしまうと、結果的にどちらの会社に所属しても仕事がしづらくなってしまう可能性があります。
引き抜きは違法ではないため嘘をつく必要はなく、むしろ歓迎している企業もあるほどです。
また、オファーが来たことを所属企業へ伝えればスムーズに転職ができるようにサポートを受けられる場合もあるため「実は……」と相談してみるのも1つの方法です。
相手都合の退職はしない
引き抜きの話を受ける場合は、相手の会社都合による急な退職は避けましょう。
相手の会社都合に合わせて退職すると、現職のプロジェクトを途中で抜けることになります。
チームメンバーや上司に迷惑がかかるだけでなく、あなたの信用も失うことになりかねません。
引き抜きを受けるのであれば、一般的な転職と同様に、具体的に日程などをきちんとすり合わせてから了承しましょう。
現職の規則は守って退社する
退職自体には問題はありませんが、現在在籍している会社で決められているルールやマナーは必ず守って退職しましょう。
即日退社や十分に引継ぎを行わずに退職するなどの行為は、自分自身の信頼を失ったり、元会社への悪影響があるため避けましょう。
退職まで計画的に業務を進め、元会社への影響を最小限にすることが良好な関係を維持して転職をするポイントです。
引き抜きのオファーがきた際に考えるべきポイント
引き抜きのオファーがあると、ほとんどの人は自分が評価されていると感じ、嬉しい気持ちになるでしょう。
しかし、1度立ち止まって以下の5点を考えてみてください。
- 労働条件を比較する
- 仕事内容と自分のスキルが一致しているか確認する
- 会社の安定性や評判を確かめる
- 競業避止義務や守秘義務に対する理解を深める
- 転職に伴うリスクを考える
引き抜きのオファーがきたとしても、すぐに答えを出さずに冷静になって考えることが大切です。
労働条件を比較する
まずは、現在の会社と引き抜き先との労働条件を比較しましょう。
具体的には、給与、賞与、福利厚生、労働時間、残業、休日休暇、昇給・昇進の機会、通勤時間などです。
また、職場の雰囲気や人間関係、会社の文化が自分に合っているかなども重要です。
引き抜きを受け入れる前に職場見学に行ったり、詳しい説明を求めましょう。
短期的なメリットだけでなく、長期的なキャリア形成を見据えて検討することが大切です。
仕事内容と自分のスキルが一致しているか確認する
引き抜きがあったとしても、必ずしも現在の職場で必要なスキルと同程度のスキルが求められているとは限りません。
中には引き抜き先の方が高いスキルが求められるものの、ポテンシャルを見込まれて引き抜きを打診される可能性もあります。
引き抜きの話を打診されたら、オファーされた仕事内容に必要なスキルに、現状の自身のスキルが伴っているかを確認しましょう。
もしもスキルにギャップがある場合は、積極的に学習して技術を磨く努力が必要です。
また、引き抜き先での研修の機会や、サポート体制について確認するのも良いでしょう。
会社の安定性や評判を確かめる
引き抜きの話を打診されても、引き抜きを行う会社の経営が不安定であったり、評判が悪いようでは引き抜きを断る方が良い可能性もあります。
会社の安定性を確認するには、財務状況を把握するとよいでしょう。
公開されている決算報告書の閲覧や、業界誌、株価、投資家向け情報などを通じて、会社の収益性や財務健全性を評価しましょう。
評判については、ネット上のレビューサイトで口コミを確認し、良い口コミよりも悪い口コミが事実であった場合に、その内容に許容できるかどうかで考えてみましょう。
競業避止義務や守秘義務に対する理解を深める
競業避止義務とは、退職後一定期間、同じ業界や業種で競合する企業に転職することを制限する条項のことです。
また、守秘義務とは、在職中および退職後も会社の機密情報を第三者に漏らしてはいけないという義務のことです。
どちらも引き抜きされる際に注意すべき重要な義務といえるため、理解を深めておくことが大切です。
転職に伴うリスクを考える
転職は新しいチャンスを提供する一方で、リスクも伴うものです。
例えば、新しい職場環境や上司・同僚との人間関係に馴染めなかったり、スキルのミスマッチが起こると短期間で再度の転職を余儀なくされる可能性もあります。
そのような事態に陥らないためにも、引き抜きを安易に受け入れず、きちんと考えた上で答えを出すことが大切です。
まとめ
引き抜きによる転職はバレることが多いですが、違法行為やマナーに注意すれば問題はありません。
ただし、引き抜きのオファーを受ける際には、転職前に引き抜き先の労働環境や企業文化、評判などをしっかり確認しておくことが大切です。
弊社ESESはSES企業であり、引き抜きの多い業界の中にある会社の1つです。
弊社では自社エンジニアが引き抜きによって去ってしまわないよう、エンジニアの労働環境をより良くする次のような取り組みを行っています。
- エンジニア自身が自由に案件を選べる「案件選択制度」の導入
- 報酬の透明性の高い「単価評価制度」の導入
- 「高還元率(現在は77%)」の実現
これにより、エンジニアは自身のキャリアプランや報酬に納得感を持って働くことができます。
引き抜きのオファーを受けて転職するか迷っている方は、ESESも選択肢の1つとしてご検討いただければ幸いです。
詳細については、以下のページよりご確認ください。
監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
プロフィールを見る
どうすれば引き抜きされやすくなる?
ほとんどの人は引き抜きの声を掛けられると悪い気分にはなりません。
また「引き抜きされてみたい」と興味を持っている人も少なくないでしょう。
優良企業に引き抜きされるには、主に次の4つのポイントがあります。
・1人で客先に常駐する
・常駐先のメンバーとの関係性を良好にする
・仕事で成果を出す
・現場から高評価を受ける
まず最初に、1人で客先に常駐するというのは、2人以上よりも引き抜きの事実がバレにくいというメリットがあるためです。
また、当然ながら常駐先のメンバーとの関係性も重要です。
常駐先のメンバーに「この人と一緒に働いていると楽しい」「この人とは働きやすい」などと思ってもらえると、引き抜きされる可能性が高まるでしょう。
さらに、いくら人間関係が良くとも、仕事で成果を出せなければ、引き抜きされる可能性は低くなってしまいます。
仕事で成果を出し「これからもうちの会社で働いて欲しい」と思ってもらえるよう高評価を受けることが大切です。