IT企業は客先常駐しかないの?自分に合った働き方を考えよう
IT企業で働きたいと考えてはいるものの、客先常駐なしの会社が見つからなかったり「IT企業で働くには客先常駐しかない」といった噂を耳にすることは少なくありません。
しかし、結論から言うと、客先常駐がない企業や・客先常駐が少ない企業はあります。
そこで、本記事では客先常駐しかないと思っているエンジニアにおすすめの企業や職種、客先常駐しかない企業の見分け方をご紹介します。
「客先常駐ってどうなの?」と考えている方は、自分がどのような働き方をしたいのかを考えながらぜひご一読ください。
この記事の監修者
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
株式会社ESES 代表取締役社長
1990年生まれ。埼玉県出身。SES業界を「“良い”SES」にするために業界No.1の立ち位置を目指す、株式会社ESESの代表取締役。人材サービス事業を行うUZUZ(ESESのグループ会社)において、営業部長や支店立ち上げを経て、最年少で執行役員に就任した経歴の持ち主。現在は、経営業務だけでなく、営業や採用にも幅広く従事し、SES業界に革新を起こすために日々奮闘中。
IT企業は客先常駐しかないって本当?
実際にIT企業でエンジニアとして働こうとすると客先常駐となるケースは多いため「IT企業は客先常駐しかない」と思われがちなのは当然ともいえます。
しかし、例えば自社開発を行っている企業がエンジニアを他社に出向させることは考えづらいでしょう。
また、大手のSIerの場合は、元請け企業として自社が客先常駐のエンジニアを集める側に回ることもあります。
つまり、そのような企業を選べば、客先常駐以外の働き方をすることは可能であり「IT企業は客先常駐しかない」というのは事実とは異なることになります。
客先常駐以外もあるが、客先常駐がほとんど
IT業界の仕事には客先常駐以外の仕事もありますが、客先常駐が多いのは確かです。
厚生労働省が公開している「働き方・休み方の改善に向けたアンケート調査」でも「顧客先での勤務」は合計で全体の9割を超えています。
また、情報産業労働組合連合会(ICTJ)の「ITエンジニアの労働実態調査」においても、対象となる情報サービス企業のうち約80%が「客先常駐あり」と回答しています。
つまり、全ての企業で客先常駐をしなければならないというわけではありませんが、IT業界の中でも8〜9割程度を占めている働き方であるのは事実といえるのです。
客先常駐が多い理由
客先常駐の仕事が多い理由としては、まず、IT業界が慢性的な人手不足であることが挙げられます。
ただ、IT企業の多くは、1年を通じて常に人手不足の状態というわけではなく、大型案件を受注した際に人手不足になるケースがほとんどです。
その際、必要な期間だけに必要なスキルを持った客先常駐エンジニアを採用すると、常時エンジニアを採用するよりも都合が良いというわけです。
また、IT業界全体の「多重下請け構造」も客先常駐が多くなる理由として挙げられます。
これは、プロジェクトにおけるシステム開発を請け負った元請けであるSIerが、2次受けのSIerに外注をし、さらに3次、4次と中小企業へ仕事が割り振られていく仕組みです。
元請けや2次請けの企業では客先常駐はほとんど発生せず、スキルの高いエンジニアが多く在籍しています。
しかし、それ以外の下請けのIT企業では、高いスキルを必要としないことも多く、未経験可など入社のハードルが低くなる傾向があるのです。
ただし、客先常駐はエンジニア側からすると、多様なプロジェクトに携わる機会を得られ、経験を積みやすいというメリットもあります。
客先常駐しかないと思っているエンジニアにおすすめの企業・職種
IT企業にエンジニアとして就職したいが、客先常駐は避けたいと考えているのであれば、次のような企業や職種がおすすめです。
- 自社開発企業
- 受託開発企業
- SIer
- 社内SE
ただし、企業によっては客先常駐の業務もあるため、これらの企業・職種でもきちんと下調べをすることは大切です。
以下では、それぞれの内容について解説します。
自社開発企業
IT企業では、他社から依頼されたシステム開発の案件を受注して開発を行う企業が多いですが、自社開発企業の場合は、自社内で製品やサービスの開発を行います。
このような企業では自社のプロジェクトに専念するため、クライアント先に出向くことはなく、自社内で一貫して業務を行います。
メリットは、プロジェクトの企画から運用まで一貫して携われるチャンスがあるため、スキルアップが目指しやすいという点です。
反対に、自社開発企業の場合は使用する技術や言語が限られることも少なくないため、幅広い実績を積むことには向いていないというデメリットもあります。
受託開発企業
受託開発企業とは、クライアントから依頼を受けてシステムやソフトウェアを開発する企業です。
受託開発企業は元請けであり、クライアントの要件に基づいて、自社内で開発を行うため、客先常駐する必要がありません。
企業によって得意分野はあるものの、クライアントからの依頼で働くため、多様なプロジェクトに携わることができるというメリットがあります。
ただし、中には客先常駐を行っている企業も存在します。
SIer
SIerとは、システムの構築から運用管理を一貫して請け負う企業のことで、多岐に渡る業界にサービスを提供しており、幅広い業務に携わることができます。
企業によっては大規模なプロジェクトに参画する機会もあり、幅広く、かつ高いスキルを身に付けることにつながるでしょう。
ただし、SIerは大きく「独立系」と「ユーザー系」に分かれており、どちらに所属するかによっても客先常駐の頻度は変わります。
独立系のSIerは、親会社をグループに持たずに様々なクライアントからの案件を請け負うため、客先常駐が多いです。
一方、ユーザー系のSIerには、IT企業だけではなく金融や商社、通信といったシステム系列企業のようなものも多く、親会社が存在することも多い傾向があります。
親会社からの案件の上流工程を担うため、客先常駐は少ないといえるでしょう。
社内SE
社内SEは自社のITに関する業務を担当するエンジニアです。
業務効率化やセキュリティ強化など、企業にとって重要な役割を担い、また、社員からの問い合わせ対応を行うヘルプデスクの役割もあります。
社内SEは自社内のIT業務を担当するため、基本的には自社内で業務を行い、クライアント先に常駐することはありません。
自社のビジネスに深く関わりつつITに関する業務全般を担うため、幅広いスキルを身につけながらコミュニケーション力やビジネスへの理解も深められます。
また、社内SEは外部の企業の案件を請けるわけではありません。
つまり、納期のプレッシャーが極めて少なく、残業や休日出勤も発生しにくいため、ワークライフバランスもとりやすいでしょう。
監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
新卒や未経験の場合は客先常駐でしか働けない?
結論から言うと、新卒や未経験であっても客先常駐なしのIT企業に就職することは可能です。
なぜならIT業界は常に人材不足であり、新卒や未経験者でも積極的に採用を行っている企業が多いからです。
とはいえ、客先常駐の企業は9割程度にものぼるため、簡単に客先常駐なしの会社に就職することはできません。
客先常駐でない企業を目指す場合は、自らプログラミングの知識や技術を身に付けておくことは必須です。
さらに、ITやプログラミングの研修を積極的に行っている企業が理想的です。
ITスキルの証明には関連資格の取得が有効です。
新卒や未経験だからといって諦めず、積極的に自分の持っている知識や技術、やる気をアピールできれば、ポテンシャルを買われ採用される可能性もあるでしょう。
客先常駐しかないIT企業の見分け方
ここまで、客先常駐のない企業についてご紹介してきましたが、反対に「客先常駐しかない」IT企業も存在します。
企業によって特徴は異なりますが、多くの場合、以下の条件に複数当てはまっていると客先常駐しかない可能性が高いです。
- 勤務先・勤務時間が曖昧
- 定期的に「帰社日」を設けている
- 自社サービスを開発していない
- 中小企業との取引がない
- 取引先に同業者が多い
- 社員数と比較してオフィスの規模が小さい
- HPなどに仕事風景の写真が載っていない
以下では、それぞれのポイントについて解説します。
勤務先・勤務時間が曖昧
客先常駐はプロジェクトごとに勤務先が異なるため、勤務地が固定されていません。
また、勤務時間もクライアント先によって変動することがあり、明確に示すことが難しいのです。
実際に働き始めるまで具体的な勤務条件を把握しづらく、曖昧な表現になっていることが多いでしょう。
募集要項に「勤務地:本社または都内」「勤務時間:配属先により異なる」といった表現が使われている場合は、客先常駐の可能性が高いといえます。
定期的に「帰社日」を設けている
エンジニアが客先常駐の場合、基本的には自社に出勤することはありません。
そのため、帰社日を設け、ミーティングや研修、業務報告などを行っています。
ここでの「帰社日」とは、自社に出勤する日のことで、客先常駐をメインとする企業の多くは月に1度の帰社日を設けていることが多いです。
帰社日には、研修や業務報告といった役割の他にも、自社への帰属意識を高める目的も含まれています。
自社サービスを開発していない
基本的に「クライアントのサービスの開発に携わる」という業務形態の企業は、客先常駐であることがほとんどです。
自社サービスを開発している企業であれば、自社内で企画・開発・運用を行うため、エンジニアが客先常駐になることはありません。
ただ、受託開発企業やSIerなどの企業は、開発を請け負っていても自社内で働くこともあるため、気になる場合は企業に直接確認してみるのもおすすめです。
中小企業との取引がない
中小企業との取引がない場合、主に大手企業や特定のクライアントのプロジェクトに参画することが基本となっていることが考えられます。
そのため、クライアント企業に赴いて業務を行っている場合がほとんどです。
「大手企業との取引多数」「大規模プロジェクトが中心」などの求人は客先常駐しかない可能性が高いといえます。
反対に、中小企業との取引が多い場合は、その企業が案件を外注や下請けに出す立場である可能性が高いでしょう。
特に、取引先として挙げられている企業がIT企業ではなかったり、大手のSIer以外の企業の場合ほど、客先常駐が発生しにくいといえます。
取引先に同業者が多い
取引先に同業者が多い場合は、客先常駐が多い企業である可能性が高いでしょう。
なぜなら、案件の進行に応じてエンジニアを必要とするため、プロジェクトの一部を同業者から請け負うことが多く、エンジニアが客先常駐する割合が高くなるからです。
特に大規模なプロジェクトや複数の企業と協力して進める案件では、1か所に集まって業務をするため、自社内での勤務が難しくなります。
取引先に同業者が多いかが分かりにくい場合は、会社名をチェックしてみましょう。
取引先の名前に「エンジニアリング」や「ソリューション」といった企業が多い場合は、同業者である可能性が高い傾向があります。
社員数と比較してオフィスの規模が小さい
客先常駐しかない場合、エンジニアの多くがクライアント先に出向いているため、社員全員が一度に集まる機会はほとんどありません。
そのため、自社のスペースは必要最低限の広さになっている企業が多い傾向があります。
数百人~数千人といった数の社員がいるにも関わらず、本社オフィスがビルのワンフロアだけであったり、支社がないなどの場合は、客先常駐となる可能性が高いです。
しかし、複数の拠点を持っていたり、リモートワークを積極的に行っている企業の場合はこの限りではありません。
求人情報だけではなく、実際に会社説明会に参加したり、インターンシップで現地を見てみる方法がおすすめです。
HPなどに仕事風景の写真が載っていない
エンジニアがクライアント先で働くことが多いと、実際に働いている様子を詳しく紹介することが難しくなります。
プロジェクトによって業務内容も異なることから、一貫して仕事内容を紹介しにくく、仕事風景の写真掲載が少ない場合は客先常駐しかない可能性が高いといえます。
また、職場の写真はあるものの、イベントを行っている写真の場合は月に一度といったペースで行われる「帰社日」に撮影したものである可能性も高いでしょう。
ただし、業務上の理由から仕事風景の写真が撮れない場合も考えられるため、写真はあくまでも判断材料の1つと捉えましょう。
まとめ
IT企業は「客先常駐しかない」といわれるほど客先常駐が多い傾向があります。
実際に8~9割程度で、客先常駐を導入している企業がほとんどです。
ただし、客先常駐以外にも働き方はあるため、本記事で紹介している「おすすめの企業・職種」を参考にしながら、自分に合った働き方を考えてみてください。
また、企業によっては客先常駐がゼロではないところもあるため、きちんと情報収集をしてから就職活動を進めましょう。
弊社ESESはSES企業です。
SES企業は客先に出向いて、クライアント企業の労働条件に沿って業務にあたるのが基本です。
ただし、弊社ではエンジニア本人が納得する働き方ができるよう、様々な制度を取り入れています。
具体的には「案件選択制度」や「単価評価制度」などが挙げられます。
働きやすい労働環境を求めている方や「自分の希望を叶えながら働きたい」と考えている方などにぴったりの働き方といえるでしょう。
ESESについてさらに詳細を知りたい方は、以下のページもご覧ください。
監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
プロフィールを見る
客先常駐が避けられがちな理由とは?
ネット上には「客先常駐はやめとけ」といった意見が目立ちますが、その大きな理由としては、以下の点が挙げられます。
・労働環境が不安定
・正当な評価が得られにくい
・残業や休日出勤が多い
・スキルが身に付きにくい
・年収が低い
確かに、客先常駐は案件ごとに勤務場所や勤務体制が変わるため労働環境が不安定になりがちですし、場合によってはスキルが身に付きにくいことは事実です。
しかし、SESの中には自分で案件を選択できたり、新しい知識や技術を積極的に身に付けられる案件に出会えれば、年収をアップさせることも可能です。
また、SESエンジニアの場合は成果ではなく技術(時間)を提供するため、比較的ワークライフバランスがとりやすいことも少なくありません。
どの職場も働きやすい環境かどうかは人それぞれ感じ方が違います。
客先常駐ではない仕事を探しつつも、働きやすい客先常駐の仕事を探してみるのも1つの手といえるでしょう。