フルスタックエンジニアとは?必要なスキルや押さえるべきポイントも解説
市場規模が拡大の一途をたどるIT業界ですが、IT業界を支えるために必要なエンジニアは慢性的に不足している状態です。
そして、エンジニアといってもその種類は様々で、一般的に一つのプロジェクトを成功させるためには、さまざまな種類のエンジニアが協力し合うことが求められます。
そんなエンジニアの中でも、今回は開発工程を幅広く担当する「フルスタックエンジニア」について、必要なスキルや押さえておくべきポイントなども交えて詳しく解説します。
IT業界でエンジニアとして働きたいものの、どのような職種で働けば良いかわからないという人は少なくありません。
本記事でフルスタックエンジニアについての理解を深め、ぜひ選択肢の一つとして検討してみてください。
この記事の監修者
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
株式会社ESES 代表取締役社長
1990年生まれ。埼玉県出身。SES業界を「“良い”SES」にするために業界No.1の立ち位置を目指す、株式会社ESESの代表取締役。人材サービス事業を行うUZUZ(ESESのグループ会社)において、営業部長や支店立ち上げを経て、最年少で執行役員に就任した経歴の持ち主。現在は、経営業務だけでなく、営業や採用にも幅広く従事し、SES業界に革新を起こすために日々奮闘中。
フルスタックエンジニアとは?
フルスタックエンジニアの「フルスタック」とは、複数の技術分野に精通していることを意味します。
つまり、フルスタックエンジニアとは、その名のとおり複数の開発工程に対応できるマルチなエンジニアのことです。
フルスタックエンジニアには、どの担当業務に対応でき、どんなスキルを持っていなければならないといった定義はありません。
例えば「フロントエンド開発とバックエンド開発」や「アプリ開発とフロントエンド開発」など複数の開発工程に対応できればフルスタックエンジニアに該当します。
フルスタックエンジニアは職種名というよりも「複数の役割に対応できるエンジニア」という存在を指す場合に用いられることが多いでしょう。
深刻な人材不足が進むIT業界において、一人で複数の業務に対応できるフルスタックエンジニアは市場価値の高い存在といえます。
フルスタックエンジニアの仕事内容
先にお伝えした通り、フルスタックエンジニアが対応する業務や持っているスキルは様々で、企業や案件によってフルスタックエンジニアの仕事内容は異なります。
しかし、フルスタックエンジニアが担当することの多い業務はある程度決まっています。
主に、以下の4つの分野のうち、複数の分野を担当できるエンジニアはフルスタックエンジニアであると言えるでしょう。
フロントエンドの開発
WebサイトやWebアプリにおいて、ユーザーから見える部分のことを「フロントエンド」といいます。
例えば、パソコンやスマートフォンなどの画面上で、ユーザーがどこかをクリックしたり、文字を入力するといった操作をする部分がフロントエンドです。
フルスタックエンジニアは、このフロントエンドの開発においてWebデザイナーの作成したデザインに基づき、コーディングや実装を担当します。
実際の開発現場では、HTML、CSS、JavaScriptなどのプログラミング言語を使用することが多く、複数の言語やフレームワークなどを使いこなせる知識や技術が必要です。
また、ユーザーにとって使いやすい画面であるか、納得できる機能が備わっているかといったユーザーの目線に立った考え方も求められます。
バックエンドの開発
フロントエンドに対して、バックエンドはユーザーからは見えない、裏側の部分を指します。
具体的には、ECサイトの受注処理や発送管理といったWebサービスを提供するうえで重要になる部分の開発が挙げられます。
どれだけフロントエンドが安定していても、バックエンドが不安定な状態であれば運用ができないため、フロントエンドと同様の安定した運用が求められます。
バックエンド開発では、Java、PHP、Ruby、Pythonなどのプログラミング言語を使用し、これらはフロントエンドとは全く異なるものです。
そのため、両方の開発を担当できるエンジニアは極めて少ない傾向があります。
フロントエンドとバックエンドの両方を一人で開発できると作業効率が非常に良いため、市場価値が高い存在であることは言うまでもありません。
アプリの開発
スマートフォンのアプリやWebアプリの開発を一手に担うこともあります。
スマートフォンのアプリはOSと連携し、一方でWebアプリはWebサイトと連携して動作するため、幅広い知識と技術が求められます。
モバイルアプリ開発はその性能だけではなく、画面のサイズやストレージ容量なども考慮して開発しなければいけません。
開発では主に、Java、Kotlin、Swift、C#などのプログラミング言語を使うことが多いです。
ただし、スマートフォンアプリの場合はiOSとAndroidで使用する言語は異なるため、それぞれに合わせた開発が必要です。
そのため、1人でモバイル端末とWebの両方の開発に精通しているフルスタックエンジニアも市場価値が高い存在です。
インフラ関連の業務
サーバーやネットワークなど、ITインフラの構築・管理・保守などを担当することもあります。
通常、インフラ関連の業務はインフラエンジニアが担当するものです。
しかし、幅広い知識やスキルを持つフルスタックエンジニアがインフラ管理を担当することで、トラブル発生時などに効率よく対応できるというメリットがあります。
サーバーの設計にはLinuxやWindows Serverを使用することが多く、これらの知識に加え、L3スイッチ、ルーターといったネットワーク機器に関する知識も求められます。
また、コマンドを使った操作が可能なレベルのスキルも必要です。
さらに、近年ではクラウドサービスを導入する企業も増えているため、クラウドの知識が求められることも多くなっています。
フルスタックエンジニアの年収
フルスタックエンジニアは一つの職種のようでいて、明確な定義のない職種であるといえます。
一つの専門性の高いエンジニアとは異なり、様々なエンジニアの作業領域に対応できるエンジニアのため、担当する分野や企業によっても年収は大きく変わります。
以下は、フルスタックエンジニアが対応することの多い分野における、エンジニアの年収です。
- システム開発:463万円
- サーバーエンジニア:453万円
- ネットワークエンジニア:436万円
- アプリ系エンジニア:426万円
引用:求人情報・転職サイトdoda(デューダ)「平均年収ランキング(職種・職業別)【最新版】」
フルスタックエンジニアはこのような複数の分野の業務を一手に担えるため、市場価値が高いことは間違いありません。
そのため、一概には言えませんが、フルスタックエンジニアの年収はこれらの一般的なエンジニアよりも高くなることが期待できるでしょう。
フルスタックエンジニアの将来性
IT業界では人材が不足しているため、多くの企業でエンジニアの確保が困難になっています。
一人で複数の業務を任せることができるフルスタックエンジニアであれば、多くのエンジニアを採用することなく、様々な開発現場で活躍を期待できます。
また、一人がワンストップで作業をするため、複数のエンジニアで作業を分担して進めるよりも迅速に対応できるでしょう。
大きな企業の場合は、それぞれの分野に専門のエンジニアを置き、質の高い開発を目指すことが多いですが、資金がそれほど潤沢ではない企業では同じようなことができません。
そのため、中小企業やスタートアップ企業、ベンチャー企業においては、フルスタックエンジニアの需要はかなり高いといえるでしょう。
IT系ベンチャー企業は増加傾向にありますが、その分フルスタックエンジニアのニーズは今後もあり続けることが予想されます。
フルスタックエンジニアのキャリアパス
フルスタックエンジニアのキャリアパスは、大きく「スペシャリスト系」と「マネジメント系」の2つに分けることができます。
「スペシャリスト系」は、エンジニアとしての専門性を高め、難易度の高いAIエンジニアやクラウドエンジニア、ITアーキテクトやITコンサルタントなどになるパターンです。
これらの仕事は、豊富な知識や経験を活かして、クライアントの要望を汲みながら現場の第一線で活躍するものです。
「マネジメント系」は、フルスタックエンジニアとして身につけた俯瞰的な視野を活かし、プロジェクトマネージャー(PM)や最高技術責任者(CTO)などになるパターンです。
これらの仕事では、豊富な知識や経験に加え経営的な視点から、管理サイドでの活躍となります。
いずれにせよ、フルスタックエンジニアとしてキャリアアップするためには、エンジニアとして知識や技術に加え、提案能力やコミュニケーション能力が求められます。
フルスタックエンジニアに必要なスキルや経験とは?
フルスタックエンジニアは幅広い分野に関わるため、求められる知識や技術の幅も自然と広くなります。
どの分野を担当にするかによっても必要なスキルや経験は異なりますが、主に次のようなスキルや経験が求められるでしょう。
プログラミング言語
フルスタックエンジニアは、開発過程においてプログラミングを任されることも多く、最も基礎的なスキルといえます。
開発するものによって使用する言語は変わりますが、複数のプログラミング言語を扱えることが求められます。
特に、JavaScriptやJAVA、Pythonといった使用頻度の高いプログラミング言語は必ず身に付けておきたいところです。
フルスタックエンジニアの場合、扱えるプログラミング言語が多いほど仕事の幅も広がるでしょう。
OS・ミドルウェア
OSとは、オペレーティングシステム(Operating System)の略語で、パソコンやアプリを操作するために必要なソフトウェアのことをいいます。
また、ミドルウェアとは、アプリの共通機能を提供したり、OSの機能強化を目的としたソフトウェアのことです。
OSとアプリケーションの中間に位置することから「“ミドル”ウェア」と名づけられています。
アプリ開発やインフラ関連の業務に携わる場合、OSやミドルウェアについても理解しておく必要があります。
全てを網羅するのは難しいですが、Windows、iOS、Androidといった主要なOSについての知識は持っておきたいところです。
ミドルウェアについても、さまざまなシステムで利用されているため、知識を身につけることは必須といえます。
これらの知識を身につけておくことで、担当できる仕事の幅も広がるでしょう。
クラウドサービス
近年では、コスト削減やシステム開発を素早く行えるなどの理由から、クラウドサービスを導入する企業が増えています。
それに伴い、フルスタックエンジニアがシステム開発においてクラウドサービスに関する知識やスキルを求められることも多くなっています。
クラウドサービスは主に次の3種類に分けることが可能です。
- サービスを提供を行う(SaaS)
- 実行環境を提供する(PaaS)
- インフラの提供を行う(IaaS)
この中でも特に、AWSやAzureなどのインフラの提供を行うもの(IaaS)を利用する機会が増えています。
フルスタックエンジニアとしての活躍の幅を広げたいと考えるのであれば習得をおすすめします。
インフラ
仕事に限らず、生活するうえでITインフラはなくてはならない存在です。
フルスタックエンジニアがインフラに関する知識や技術を身につけていれば、インフラに障害が発生した場合でも、インフラエンジニアに頼ることなく対応が可能です。
フルスタックエンジニアとして業務を行う上で、様々な分野でインフラに関する知識が必要になります。
インフラエンジニアとしての知識も持っていれば、フルスタックエンジニアとして頼れる存在になるでしょう。
上流工程のスキル・経験
フルスタックエンジニアは業務の幅が広いため、実装だけではなく、要件定義や設計などの上流工程に携わることもあります。
上流工程の業務を行う上では、クライアントとの擦り合わせは欠かせません。
そのため、コミュニケーション能力やマネジメント能力も必要になります。
上流工程の業務に関するスキルや経験を積んでおけば、より市場価値の高いエンジニアとして活躍することができるはずです。
監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
フルスタックエンジニアに有利な資格を取得しよう
IT業界において、フルスタックエンジニアは需要が高いですが、自身が「様々な分野に対応できる」と言っても、採用する側からすると判断し難いというのが実情です。
そこで、、これまでの実績に加え、フルスタックエンジニアであることが証明できるような資格を取得する方法がおすすめです。
フルスタックエンジニアには明確な定義がないため、必須の資格はありません。
しかし、経済産業省(情報処理推進機構)が主催する国家資格を取得しておけば、転職の際などにも有効な証明となります。
具体的には「ITストラテジスト試験」「システムアーキテクト試験」「プロジェクトマネージャー試験」の3つがおすすめです。
いずれも国家資格であるため合格率は低いですが、取得をすればフルスタックエンジニアとして活躍できる場がより広がるでしょう。
フルスタックエンジニアになるために押さえるべきポイント
フルスタックエンジニアになるためには、具体的な知識やスキルの習得だけではなく、自分自身の「動き方」にもポイントがあります。
以下では、フルスタックエンジニアを目指す際の「動き方」として押さえておきたいポイントを4つ紹介します。
自分の得意分野を作る
フルスタックエンジニアには幅広い知識やスキルを持っていることが求められ、また、幅広い知識やスキルを持っている人ほど需要は高いといえます。
とはいえ、複数の分野を担当する場合でも、深い知識を持っていないと業務を1人で担当することはできません。
需要のある分野の中から、まずは「この分野は得意」という軸となるものから選び、得意分野として知識を深め、スキルを磨きましょう。
スキルを磨く
自分の専門分野が決まったら、その分野に関連する業務を全て担当できるよう、少しずつスキルを磨き、対応できる業務の裾野を広げていきましょう。
IT業界は別分野でも業務が全く違うというわけではなく、似ているものもあります。
そのため、得意分野を決めたとしても、幅広く学んでいくことは欠かせません。
また、幅広く学びつつも、専門性を磨くことも大切です。
専門性が足りない場合「特定の分野に特化したエンジニアにはかなわない」と判断され、フルスタックエンジニアの持ち味を活かせなくなる可能性もあります。
複数の分野の知識を身につけスキルを磨くためには数年ほどかかることも少なくありませんが、じっくり着実にフルスタックエンジニアとしての強みを育てていきましょう。
実績や経験を積む
知識を持っていても、実際に業務をこなせなければ意味がありません。
専門分野に関する知識や技術の習得がある程度できたと感じたら、実践で実績や経験を積み重ねていきましょう。
現在フルスタックエンジニアとして活躍している人も、まずは下流の仕事からスタートしているケースがほとんどです。
下流工程を経験しつつ、多くの案件を担当して実績や経験を積んでいくことが大切です。
最初からすべての業務を担当することはできませんが、スキルが活かせそうなプロジェクトには積極的に参加し、徐々に業務範囲を広げていきましょう。
最新の知識や技術について学ぶ
IT業界はほかの業界に比べて技術の発展のスピードが早く、一度知識を付けてもすぐに新しい知識に更新することが求められます。
特にフルスタックエンジニアは担当範囲が広く、市場ニーズは高いため、意識的に新しいスキルを学び、必要に応じて業務に活かしていくことが求められます。
今注目されているものは何か、求められているものは何かといった点に、日々アンテナを張っておきましょう。
具体的には、毎日ニュースサイトやITに関する記事をチェックしたり、セミナーやコミュニティに参加するなどの方法があります。
まとめ
フルスタックエンジニアは、複数の開発業務を担当できる、いわばオールラウンダー的な存在です。
企業からの需要も高く、将来性も期待できる立場であるため、興味を持った人は、ぜひ本記事で紹介した知識や技術の勉強を始めてみましょう。
ちなみに、弊社ESESは、様々なクライアントに対してエンジニアを派遣し、労働力や技術力を提供する契約形態をとっているSES企業です。
SESという働き方であれば、プロジェクトごとに様々な案件に携わることができるため、フルスタックエンジニアとしての幅広いスキルを活かしながら、活躍の場を広げられます。
ESESでは、次のような制度を取り入れ、エンジニアが働きやすい環境を作っています。
- 単価評価制度によって正当な評価を得ることができる
- 案件選択制度でエンジニア自身の希望を反映することができる
- 還元率が高く、エンジニアに適切な報酬が還元される
フルスタックエンジニアとして働いていきたいと考えている方や、フルスタックエンジニアとしてより働きやすい環境を求めているという方はぜひESESの募集要項をご覧ください。
弊社を就職先の1つとして検討していただけると幸いです。
監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
プロフィールを見る
「フルスタックエンジニアは必要ない」というのは本当?
日本のIT業界では「フルスタックエンジニアは必要ない」といった議論があることも事実です。
それは、日本の企業、特に大企業が、一つの専門分野に特化したエンジニアを複数集めてシステムを開発する傾向があるからです。
また、それらの全体的な技術を把握する役割として、プロジェクトマネージャーなどの管理職が存在しています。
そのため「複数の分野を担当できるフルスタックエンジニアでなくてもよい」ということなのです。
しかし、近年ではスタートアップ企業やベンチャー企業だけではなく、大企業でもフルスタックエンジニアを求める動きが高まりつつあります。
なぜなら、高いスキルを持つフルスタックエンジニアの存在が知られるようになってきているためです。
つまり「フルスタックエンジニアは必要ない」というのは一部の企業のみの話であり、IT業界全体から見ると、今後需要はますます高まると考えられます。
フルスタックエンジニアとして併せ持つ、複数の分野の知識やスキルへの自己研鑽を怠ることがなければ、需要はあり続けるといえるでしょう。