ITストラテジスト試験とは?概要やメリットを理解しよう
目次
「ITストラテジスト試験」は、DXが進められている近年、人気が高まっている資格試験です。
また、企業における課題の明確化やIT戦略の立案などの役割を担うITエンジニアである「ITストラテジスト」におすすめの資格といえます。
数ある情報処理技術者試験の中でも、最難関であるレベル4の国家資格で、取得することで専門性の高さを客観的に証明できます。
その他にも、仕事の幅を広げやすかったり転職時に有利となるため、積極的に挑戦すると良いでしょう。
本記事では、ITストラテジスト試験の概要や資格取得のメリットなどを詳しく解説します。
ITエンジニアとしてキャリアアップを考えている人や、ITストラテジストの受験を考えている人は参考にしてください。
この記事の監修者
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
株式会社ESES 代表取締役社長
1990年生まれ。埼玉県出身。SES業界を「“良い”SES」にするために業界No.1の立ち位置を目指す、株式会社ESESの代表取締役。人材サービス事業を行うUZUZ(ESESのグループ会社)において、営業部長や支店立ち上げを経て、最年少で執行役員に就任した経歴の持ち主。現在は、経営業務だけでなく、営業や採用にも幅広く従事し、SES業界に革新を起こすために日々奮闘中。
ITストラテジスト試験とは?
ITストラテジスト試験は、高度IT人材を認定する国家資格です。
独立行政法人情報処理推進機構が実施しており、合格することで、IT戦略の企画立案やシステムの最適化を行う能力の証明ができます。
ここからは、以下の項目に分けて試験概要を解説します。
- 対象者像
- 出題範囲
- 試験時間・出題形式・出題数・解答数
- 難易度
- 合格率
ITストラテジスト試験の受験を検討している方は、参考にしてください。
対象者像
独立行政法人情報処理推進機構によると、以下の対象者像が示されています。
高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術(IT)を活用して事業を改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。 |
引用:「ITストラテジスト試験 試験情報」
ITストラテジスト試験では、ITに関する知識だけでなく、それを活用する能力が求められます。
そのため、システム開発現場と経営企画の両面を経験した中堅ITエンジニアや、システムコンサルティングの実務経験が豊富な人が多く受験する傾向にあります。
出題範囲
ITストラテジスト試験は4科目に分かれており、それぞれの出題範囲は以下の通りです。
午前Ⅰ(3分野から出題) | ・テクノロジ系 ・マネジメント系 ・ストラテジ系 |
午前Ⅱ(8分野から出題) | ・セキュリティ ・セキュリティ戦略 ・システム企画 ・経営戦略マネジメント ・ビジネスインダストリ ・企業活動 ・法務 |
午後Ⅰ(右の範囲から出題) | 1.業種ごとの事業特性を反映し情報技術(IT)を活用した事業戦略の策定に関すること 2.業種ごとの事業特性を反映した情報システム戦略と全体システム化計画の策定に関すること 3.業種ごとの事業特性を反映した個別システム化構想・計画の策定に関すること 4.事業ごとの前提や制約を考慮した情報システム戦略の実行管理と評価に関すること |
午後Ⅱ(右の範囲から出題) |
午前Ⅰの試験問題は、同時間に開催される高度情報処理技術者試験(ネットワークスペシャリスト試験やプロジェクトマネージャ試験など)の午前Ⅰ試験の問題と共通です。
午前Ⅱで出題されるセキュリティはテクノロジ系であり、システム企画や法務はストラテジ系であることから午前Ⅰの範囲と重なりますが、問われる内容がより高度になります。
午後Ⅰ・Ⅱの詳細については、IPAの試験要綱(37頁)をご確認ください。
参考:IPA「試験要綱」
試験時間・出題形式・出題数・解答数
各試験の試験時間、出題形式、出題数、解答数については、以下の表をご確認ください。
午前Ⅰ | 午前Ⅱ | 午後Ⅰ | 午後Ⅱ | |
試験時間 | 9:30~10:20 (50分) | 10:50~11:30 (40分) | 12:30~14:00 (90分) | 14:30~16:30 (120分) |
出題形式 | 多肢選択式 (四肢択一) | 多肢選択式 (四肢択一) | 記述式 | 論述式 |
出題数 | 30問 | 25問 | 3問 | 2問 |
解答数 | 30問 | 25問 | 2問 | 1問 |
参照:独立行政法人情報処理推進機構「試験情報」
午前Ⅰ・Ⅱはマークシートを使用した四肢択一式で、出題された問題全てに回答する必要があります。
午後Ⅰ・Ⅱについては、出題された中から解答する問題を自由に選べるため、自身の得意分野を選択しましょう。
難易度
IPAの主催する情報処理技術者試験は全部で13あり、経済産業省はこれらを4つのレベルに分類しています。
ITストラテジスト試験は、その中でも最難関とされるレベル4に属しており「高度情報処理技術者試験」として位置付けられています。
難易度や専門性の高さから、司法書士試験や税理士試験などの士業試験と同程度として格付けされることも多いです。
なお、ITストラテジストの資格取得者は、厚生労働省が認める専門職として認定されます。
合格率
以下の表は、過去10年分のITストラテジスト試験の受験者、合格者、合格率をまとめたものです。
年度 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
---|---|---|---|
平成25年度秋期 | 4,810 | 677 | 14.1 |
平成26年度秋期 | 4,466 | 671 | 15.0 |
平成27年度秋期 | 4,487 | 656 | 14.6 |
平成28年度秋期 | 4,594 | 645 | 14.0 |
平成29年度秋期 | 4,747 | 700 | 14.7 |
平成30年度秋期 | 4,975 | 711 | 14.3 |
令和元年度秋期 | 4,938 | 758 | 15.4 |
令和3年度春期 | 3,783 | 579 | 15.3 |
令和4年度春期 | 4,450 | 660 | 14.8 |
令和5年度春期 | 4,972 | 769 | 15.5 |
参照:独立行政法人情報処理推進機構「推移表」
ITストラテジスト試験は、出題範囲の広さから難易度が高くなっています。
また、解答方法はマークシート方式だけでなく、自分の考えを論理的に説明する記述方式も含まれるため、単なる知識の暗記では合格できません。
ITの専門知識と実践的な問題解決能力が求められる試験なため、そのハードルの高さが合格率の低さに繋がっていると考えられます。
ITストラテジストの業務と役割
独立行政法人情報処理推進機構によると、ITストラテジストの業務と役割は以下のように示されています。
- 業種ごとの事業特性を踏まえて、経営戦略の実現に向けたITを活用した事業戦略を策定し、実施結果を評価する。
- 業種ごとの事業特性を踏まえて、事業戦略の実現に向けた情報システム戦略と全体システム化計画を策定し、実施結果を評価する。
- 情報システム戦略の実現に向けて、個別システム化構想・計画を策定し、実施結果を評価する。
- 情報システム戦略の実現に向けて、事業ごとの前提や制約を考慮して、複数の個別案件からなる改革プログラムの実行を管理する。
つまりITストラテジストは、ITを活用して事業革新や業務効率化などを推進し、役割を主導的に果たしながら下位者を指導する立場といえます。
ITストラテジスト資格取得のメリット
ITストラテジスト資格を取得することで、以下のようなメリットを得られます。
- 就職・転職活動で有利に働く
- 仕事の幅を広げられる
- 社外の人材と交流しやすくなる
エンジニアとしてのキャリアアップを目指す人にとって、ITストラテジストはメリットの多い資格です。
メリットを把握することで、資格取得に対するモチベーションが上がるでしょう。
就職・転職活動で有利に働く
ITストラテジスト資格は、ITと経営の両面で専門性が高く、取得の難しい国家資格です。
難易度の高い一方で、取得すれば自身の高度なスキルを客観的に証明できます。
そのため、ITストラテジストの資格を保有していることは、就職・転職活動において強力な武器となり、企業のデジタル戦略を牽引できる人材として評価されるでしょう。
キャリアアップのチャンスも広がるため「ITエンジニアとして長く活躍したい」と考える人にはおすすめの資格といえます。
仕事の幅を広げられる
ITストラテジストは、自身が知識やスキルを活用して業務を行うことに加え、指導者的役割も担当します。
そのため、システム開発業務に携わるだけでなく、コンサルタントやプロジェクトマネジャーとして活躍することも可能です。
また、最新のIT動向を反映したシステム戦略の立案や、部署を越えた全社的な取り組みまで一手に担うことができます。
ITストラテジスト資格を取得することで、単なる開発者にとどまることなく業務の幅を広げられるというメリットがあるのです。
社外の人材と交流しやすくなる
ITストラテジスト資格の取得は、自身の能力を証明すること以外にも、様々な新しい機会を生み出してくれます。
ITストラテジストの合格者はJISTA(日本ITストラテジスト協会)への入会が可能です。
JISTAでは勉強会が開催されており、ディスカッションやプレゼンなどを通して社外のエンジニアと交流する場が設けられています。
このような勉強会は、自身のスキルを高めるだけでなく、情報の共有や人脈形成などを行う絶好の機会となるでしょう。
監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
JISTA(日本ITストラテジスト協会)とは?
JISTAは、情報化戦略や情報化計画についての情報交換や、相互研鑽による実務能力の向上と人脈形成を主目的として、2011年に設立されました。
ITストラテジスト試験の合格者だけでなく、その他の高度プロフェッショナル試験の合格者、及びITストラテジスト試験を受験する予定の方も入会可能です。
北海道から九州まで全国8つの支部から構成されており、各支部にてセミナーや研究活動、交流会、合宿などの活発な取り組みが行われています。
ITストラテジスト資格を取得しJISTAのコミュニティに参加することで、最新技術やITトレンド、キャリアに関する情報収集ができるのは、大きな魅力といえます。
JISTAについて、さらに詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
参考:一般社団法人日本ITストラテジスト協会「日本ITストラテジスト(JISTA)とは」
まとめ
ITストラテジストは、ITの高度な知識やスキルを活用して、企業の課題の明確化や業務効率化、IT戦略の立案などを行う職種です。
ITストラテジストとして働く人には、ITストラテジスト資格の取得がおすすめですが、合格率は15%前後と難易度は高いです。
しかし、資格を取得しておけば専門性の高さを客観的に証明でき、仕事の幅を広げやすいなどのメリットがあります。
「まだ経験が少なくて試験を受ける程の自信がない…」という人は、SES企業で経験を積みながら学んでいくのがおすすめです。
SES企業とは、ITエンジニアを必要としているクライアントへ自社のエンジニアを派遣し、その技術力を提供する企業です。
弊社ESES(イーエス)もSES企業の1つで「案件選択制度」や「単価評価制度」といった制度を取り入れながら、エンジニアの働きやすい環境づくりを目指しています。
「経験を積みながら知識やスキルを身に付けていきたい」と考えている方は、ESESを転職先の候補として検討してみてください。
監修者コメント
白川 聖悟SHIRAKAWA SEIGO
プロフィールを見る
情報処理技術者試験のレベル分け
先述の通り、ITストラテジスト試験を含む情報処理技術者試験には、4つのレベルがあります。
最も難易度が低いレベル1には「ITパスポート」と呼ばれる試験があり、こちらはITの基礎知識を問われる初心者向けの資格です。
レベル2に「情報セキュリティマネジメント」や「基本情報技術者」があり、レベル3には「応用情報技術者」が位置付けられています。
最難関のレベル4には以下の試験があり、ITストラテジスト試験も含まれています。
・ITストラテジスト
・ネットワークスペシャリスト
・データベーススペシャリスト
・エンベデッドシステムスペシャリスト
・システムアーキテクト
・プロジェクトマネージャ
・ITサービスマネージャ
・システム監査技術者
・情報処理安全確保支援士
レベル別に様々な資格試験があるため、ITエンジニアとしての経験が少ない方は、レベル1から挑戦することをおすすめします。
段階を踏んで徐々に取得していくことで、挫折することなくITストラテジストの資格を取得できるでしょう。
参考:IPA「試験区分一覧」